「僕はたいしたことはしていない。ただ自分が欲しいものを作っているだけ」とは南さんがよくいう言葉。しかしその南さんのシンプルな “WANT” が多くの支持を得ているのが事実。そしてそのクリエイティブの中核にあるのが素材開発だ。南さんがどんな目線でディレクションを手がけているのか。Graphpaper、FreshServiceを軸にお話を伺いました。
FreshServiceはどういった経緯でスタートしたプロジェクトだったのでしょうか?
そもそものコンセプトは“架空の運送会社をコンセプトにしたモバイルストア”。食、衣類、日用品などジャンルを問わず、僕がセレクトしたアイテムを紹介する移動型のセレクトショップでした。新宿のThe Conran Shopを皮切りにいくつかの場所で開催させてもらったのですが、その都度アイテムをセレクトして買い付けるという作業が次第にヘビーになってきて…。じゃあ自分たちで作ってみようということで、今のようにオリジナルプロダクトを提案するブランドに変化していったんです。
今は移動式ではなくいくつかの店舗を構えて、オリジナルとセレクトをミックスしながら商品を提案しています。
『すでに世界中で作られているものを独自の視点で再構築し、新たな製品として提案する』。まさにそのコンセプト通りのユニークなアイテムたちが並びます。
服は、“道具としての服”がコンセプト。逆に雑貨類はファッション的な目線で再解釈していて、『こういうのあったらいいな』とか『なんでこういうのが無いんだろう』という個人的な欲求や疑問を形にしています。
Graphpaperとは対照的なスタンスですね。
そうですね。Graphpaperはシンプルで上質。どちらかというとストイックなものづくりであるのに対して、FreshServiceは雑貨的。プリントTシャツのボディとして使われるGILDANの無地Tシャツがありますが、ああいうジェネラルなモノの良さを追求しているという感じです。
南さんの「もっとこうだったらいいのに」の着眼点はいつも的確だなと感心してしまいます。そもそもそういった気づきや着想はどこから得ているのでしょうか?
それが結構行き当りばったりなんです(笑)。僕としては生活している中でふと感じることを形にしているだけ。強いて言えば、立ち止まって考え込むタイプではなくジプシーのようにあちこち移動する生活を送っていることが影響しているかもしれません。普通の人とはちょっと違うシチュエーションにたくさん遭遇するので。
思いついたものがすでに世の中に存在していた、ということもありますか?
もちろんありますし、その場合わざわざ僕が作る必要は無いのでやめます。ただ、機能としては満たしているけれど、それが“欲しいデザイン”になっているかどうかは別。そういう意味でも「もっとこうだったらいいのに」というものは割とたくさんあるんですよね。それこそ素材感とか。
南さんの素材へのこだわりは有名です。
むしろそれしかやってないと言ってもいいくらいです。例えばFreshServiceのファン付きのベストには帝人フロンティアの「ソロテックス」を使っています。「ソロテックス」は、機能性はもちろんですが、化繊素材にありがちな光沢感が無いところがいい。そこが他には無い魅力だと思います。
FreshServiceを継続する中で変化した部分はありますか?
強いて言えば展開店舗が増えたことで、モノ作りがしやすくなったというのはあるかもしれません。ただ、数が増えてもそれが消化できなければ意味がない。僕がいいと思ったものを、どうやってお客様にきちんと知ってもらうか。むしろそこに注力しているのかもしれません。
例えば先日、FRESH DRINK SERVICEという新しいプロジェクトを立ち上げました。グラスやカップ、タンブラーなど、主にキッチン用品が揃うプロジェクトですが、ただ作って販売するだけでは面白く無いし、プロダクトの良さも伝わりづらいですよね。なのでショップの中に飲食できるスペースを確保して、実際に使ってもらうイベントを開催したりしています。
売り手から買い手へ、という一方通行の中に相互的なコミュニケーションを付け加えていく。
FRESH DRINK SERVICEのウエアもスタッフが着用するからこそ、その性能の良さをアピールできる。防汚性、抗菌性が高いんです、って文字で伝えるだけじゃ説得力がないですから。
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