安西 こずえ

Kozue Anzai

Special Interview
2026.03.31 Tue

01. ロゴやブランドが前に出すぎた服はラグジュアリーに見えない。今は、やはり素材を見る時代だから

 

現代人は時間がない。予定が詰まる日は、服にも“気持ちの余白”が欲しくなる。それが心のゆとりとなり、大人の品のよさにもつながっていく。スタイリストの安西こずえさんが大切にするのは、そんな品と、その人らしさを装うこと。頑張っているように見せないのに、きちんと整っている。その感覚を支えるスタイリング術と、自身がデザインするCOZ made by WRAPINKNOT(以下、COZ)の服作りについて話を聞いた。

ご自身、また俳優や著名人のスタイリングを組むうえで、時代が変わっても大切にしている軸はありますか。

 

やっぱり結局いちばん大事なのって、「その人らしさ」と「品のよさ」なんです。トレンドはもちろん見ます。見ますけど、それだけ拾ってもしょうがないんですよ。特にレディースは、“女っぽさ”を外したくないんですよね。別に露出してるとか、そういうことじゃなくて、例えば、デニムに白シャツみたいなシンプルな組み合わせでも、ちゃんと「女っぽい空気」が出ているか。そのニュアンスをどう作るかをいつも意識しています。

 

 

いまの時代における「品のあるおしゃれ」とは、どのようなものだと感じますか。

 

分かりやすいロゴに頼らないことじゃないですか。ロゴが前面に出たものばっかり着てると、結局“ロゴ祭り”みたいになっちゃうんで。私はそれ、あんまり素敵だと思わないんですよね。買った瞬間はテンション上がるんですよ、もちろん。でも、そういうのってわりとすぐ飽きるんですよ。で、結局フリマに出したいとか言い出す。だったら最初から、そこに頼らなくていいものを選んだほうがいいと思うんです。今ってむしろ、「それどこの?」って聞かれて、「へえ、素敵」ってなるような、分かりづらいけどすごく上質、みたいなもののほうが気分なんですよ。派手にするにしても、育ちのよさとか、品のよさは忘れたくない。そこは、自分の中で譲れないもの選びの基準になっています。

普遍的な美しさとトレンド、どうチューニングしていますか。

 

いわゆるクワイエットラグジュアリーのような、さりげなさを含んだ豊かさと、時代によって移り変わるムード。それはね、どっちも必要なんですよ。どっちかだけだとダメで。普遍的にいいものだけだと、人によってはちょっと地味に見えちゃうこともあるし、逆に時代性ばっかり入れると、今度は服だけが強くなって、その人が消えちゃう。だから適度に両方を混ぜる。個性とのバランスを見ながら、ちょうどいい配合を探す感じです。例えばデニムにニットをさらっと着る、みたいなのって、実はすごく難しいんですよ。特に日本人の女性は、ちょっとしたクセとか、少しだけ盛る感じがないと、さらっとしすぎて終わっちゃうことも多いので。もちろんTシャツ一枚をさらっと素敵に着られる人もいますよ。でも本当にごく一部。だから私は、普遍とトレンドの間を見ながら、その人に合う“ちょうどいい盛り方”を探すのが、スタイリングだと思ってます。

 

 

メンズスタイリングでは、どのような観点を大切にしていますか。

 

メンズは、やはり「サイズ感が命」だと思っています。もちろん、あえてオーバーに着るのもありです。今っぽさとして必要な時もあるし。けれどスーツに関しては、ビシッと合ってるかどうかで全部が決まるんですよね。ドラマやテレビの収録現場で、若い俳優さんが太いデニムに大きすぎるジャケットを着てて、なんか“着せられている”みたいに見える時があるんですよ。本人は今っぽいと思っているかもしれないけど、もうちょっと綺麗に着せてあげたほうが絶対かっこいいのにって思うこと、結構あります。

服のサイズ感への厳しさは、どこで培われましたか。

 

スタイリストの師匠がメンズ中心だったので、スーツの場数は踏んできました。裾幅が何センチか、みたいな細部のこだわりやルールを叩き込まれてきたのが大きいと思います。若い頃に身体に染み込んだ、“きちんと見せる”感覚が基準として残っていて、特にスーツのサイジングには自然と目が厳しくなります。師匠のもとでのアシスタント期間は「地獄でした」と言い切れるぐらい濃い時間を過ごしました。師匠は優しかったですが、仕事量は半端じゃなかったです。そこで鍛えられたことが、判断の速さや、装いの細部への執着を支えていると思います。

 

 

普段、どのようなものからスタイリングの影響を受けていますか。

 

私、あんまり人に興味なくて(笑)、同業のスタイリストさんの作品はほとんど見ないんですよね。参考にするのは、もっといろんなところ。ビリー・アイリッシュも見るし、リアーナも見るし、ヘイリー・ビーバーも見るし、ティモシー・シャラメも可愛いなと思うし。昔ながらのファッションアイコンっぽい人たちももちろん見ます。誰か一人をずっと追うっていうより、いろんな人のいろんな要素をつまんで、自分の中で編集して出してる感じです。そこは、スタイリングもそうだし、COZの服作りもまったく同じですね。

 

 

solotex公式アカウントで更新情報をお届けしています。

安西 こずえKozue Anzai
スタイリスト。1971年生まれ。メンズスタイリスト近藤勝に師事し、2000年に独立。メンズのスタイリングからキャリアをスタートし、現在は女性誌・広告を中心に幅広く活躍。ニットブランド COZ made by WRAPINKNOT、リゾートウェアブランド mikomori などのディレクションも行う。