祐真 朋樹

Tomoki Sukezane

Special Interview
2019.04.24 Wed

03. 素材はやっぱり面白い

 

祐真さんがスタイリングをする上で、あるいは洋服を評価する上で、素材というものは大事でしょうか?

 

すごく大事ですね。合わせにおいては特にそう思います。何と何を合わせると面白いとか、そういうのはありますよね。また素材ファーストで服を選ぶ場合もある。個人的にはスーツはウールモヘアが好きです。それに、デザイナーが素材を売りにするケースもありますよね。ブランドタグの隣に、素材のタグがついていたりして。そういうのも面白いなって思います。

 

 

近年、合繊素材の開発はますます進んでいます。帝人フロンティアが開発するソロテックス®もそのひとつですが、そう言った素材に関してはいかがでしょうか?

 

ファッション的には、1996年にプラダのメンズが立ち上がった時にリリースされた、ストレッチの入った光沢のあるナイロン素材が印象的です。世界的にヒットして、30km分の生地が売れたという噂もあったくらい。合繊生地がモードファッションに侵入してきたという印象が強かったです。個人的には、その少し前にドルチェ&ガッバーナが出していたストレッチ素材のジャケットとパンツが好きでした。ストレッチパンツが脚を長く見せてくれるという感覚は、当時は斬新でしたね。

期待するのは、やはり快適性でしょうか。例えば、先ほど言ったドルチェ&ガッバーナのアイテムもそうでしたが、ストレッチの素材が混ざったジャケットやパンツなどは、シルエットをうまく作ってくれたりする。そういうのはすごく好きです。

 

ストレッチ性というのは、多くの人が合繊に期待するもののひとつです。

 

ただ、大事なのは伸縮の度合い。やみくもに伸びればいいというものじゃないんですよね。伸び過ぎる生地も不便だし、伸びるだけじゃなく縮む力も大事。そのあたりのバランスが大事だと思います。

もちろん合繊のメリットはストレッチ性だけじゃないですよね。冬は暖かく、夏は涼しく。速乾性や防臭性。そういった様々な面での快適性にも寄与するものだと思いますし、今後ますます進化を遂げていくジャンルなんじゃないでしょうか。期待する部分は大きいです。

 

 

「さらなる進化に期待」

 

 

さて、ソロテックス®という素材を用いて新しいプロダクトを作るにあたり、祐真さんにはSTAIR(ステア)というブランドをご紹介いただきました。このブランドをお選びになった理由をお聞かせいただけますでしょうか。

 

僕が今、香取慎吾さんと取り組んでいるブランド、JANTJE_ONTEMBAAR(ヤンチェ オンテンバール)のレディスを展開するにあたり、ご相談をさせていただいたのが、STAIRのデザイナーである武笠綾子さんなんです。とても美しいレース使いをされるのが印象的で、洋服全般に非常に詳しい。実際、JANTJE_ONTEMBAARで作っていただいたものはすぐに完売するほど人気でした。ちょうどそんなタイミングで今回のこの取り組みのお話もいただいたので、ぜひまた武笠さんにと思ったんです。

 

 

ソロテックス®という素材を使ったプロダクトの開発も期待できると。

 

武笠さんには、冒頭でもお話しした“多様化”的なものが備わっているんじゃないかと思ったんです。何に対しても受け応えできる柔軟性というか、懐の深さというか。

 

現在、コットンタッチでありながら機能性がある柄物の生地を開発していて、秋冬のアイテムとしてリリース予定です。

 

楽しみですね。武笠さんは素材にも精通していますから、きっとソロテックス®も上手に料理してくれるのではないかなと期待しています。

 

最後に、今後の素材開発において帝人フロンティアに期待することがあればお聞かせいただけますか。

 

着やすさというのはもちろん大事なのですが、個人的には、例えばシワになった時に格好いい素材というのもあったら嬉しいなって思います。これって、デジカメを使いながらもフィルムカメラの味わいを期待するのと一緒で矛盾があるんだけど(笑)。でも、合繊でありながらきちんと風合いがあるというか、表情が楽しめるというか。そういうことができたら素敵じゃないですか。そのあたりの「加減」に期待したいですね。

 

次回は最終回。5/13(月)公開予定です。お楽しみに!

祐真 朋樹Tomoki Sukezane
雑誌「POPEYE」でファッションエディターとしてのキャリアをスタート。その後スタイリスト、ファッションディレクターとして活躍。日本のファッションシーンを最前線で牽引してきた。パリとミラノのコレクション観覧歴は25年以上。自他ともに認める、モード・ファッションの伝道者。