東京ブランド黎明期の2000年代に産声をあげ、今も第一線でシーンを牽引し続けるsoe。その取り組みは常に実験的で、ファッションに新しい価値をもたらす存在です。デザイン、素材、縫製。どれにも偏ることなく、あくまで“ファッション”として成立することを前提にものづくりをするsoeが、それを実現するための素材のひとつとしてソロテックス®を選んだ理由とは? 伊藤さんならではの視点で、その価値観を語って頂きました。
パリコレクションにも出展をしているsoe(ソーイ)。まさに日本を代表するブランドのひとつですが、まずはその原点から教えてください。ブランド立ち上げのきっかけはなんだったのでしょうか?
高校卒業後はイギリスに留学していたのですが、日本に戻った後もなかなかやりたいことが見つからず、家にこもりがちになる時期があったんです。そんな僕をみかねた母が、僕をヨウジヤマモトさんに会わせてくれるきっかけを作ってくれた。それがすべての始まりですね。
プロフィールにはいつも“独学で服作りを学ぶ”と記載されていますよね。それはヨウジヤマモトで学んだのでしょうか?
独学といってもそんなにたいそうなことはしていないんですよ(笑)。純粋にヨウジヤマモトの世界観に憧れてアトリエに出入りさせていただくうちに、少しずつ服作りに興味が湧いていった。そこで働くスタッフの方もみんな格好良くて、ファッションだけじゃなくそのライフスタイルに憧れましたね。僕も当時は髪の毛を伸ばしてギャバジンのスーツを着たりしていました。
もともとファッションに興味があったのでしょうか?
特別ファッションが大好きだったというわけではなく、人並みだったと思います。だけど、実際にやってみると楽しくて、そんなにハマったのならということで、自分で服作りを始めてみたんです。最初に作ったのは確かTシャツとブラックジーンズ。ジーンズはすごく肉厚なものが作りたくて、16オンスくらいの生地で何種類か作ったんですよ。それを都内のセレクトショップに売り込んだら、思いのほか売れたんですよね。その頃はまだ今のようにドメスティックブランドっていうものが多くなかったから、面白がられたのかもしれませんね。
世の中にないものを作り出す感覚だったのでしょうか?
強く意識したわけではないですが、結果的にそうなったという感じです。
ブランドを展開する上で明確なコンセプトはあったのでしょうか?
明確にコンセプトを掲げていたわけじゃないんですが、ヨーロッパのファッションとストリートの90’sスタイルにヨウジさんへの憧れみたいなものをミックスさせたら面白いんじゃないかっていうことは考えていましたね。モードとストリートのミックスは今では世界的に見て当たり前に行われているアプローチですが、当時はまだそういうことを提案するブランドが少なかったかもしれません。
soeというブランドはコレクション全体の世界観もユニークだし、プロダクトひとつ一つの作り込みも深い。ライフスタイルとしての提案も明確です。伊藤さんはファッション、プロダクト、スタイル、あるいはカルチャー。どの目線でブランドを作り上げているんでしょうか?
それを決めるのは難しいですね。すべては連動しているので。
ブランドの展開として特に興味深いのはその世界観の広がりです。2008年にはシャツに特化したsoe shirtを立ち上げていますが、それは何がきっかけだったのでしょう?
最初は何でも新鮮で楽しく取り組めていたんですが、やはりどこかのタイミングでデザインとビジネスのバランスに迷う時がある。あるいはデザイナーとして何が提案できるかということを深く考えすぎてしまう時期が来るんです。そうすると変な力が入って、余計うまくいかなくなったりするんですよね。
そんな時に運よく、パリでプレゼンテーションをやらないかというお誘いを受けて挑戦してみることになったのですが、僕としてはそれをきっかけに何か新しいことをしたいと思ったんです。パリのスタッフと色々ディスカッションをしている中で、じゃあホワイトシャツをテーマに何かやってみよう!となったのが、soe shirtがスタートするきっかけですね。
では、soe shirtはもともとパリ発信の企画だったんですね。
そう。展示会もパリでやって、逆輸入的に日本でも販売するような感覚でした。
なぜ白のシャツだったのでしょうか?
それが自分のベーシックだったからです。いろいろ考えてみたんですが、自分のワードローブの基本はカットソーでもスウェットでもジャケットでもなくシャツだった。だったらそれを深掘りしてみようと思ったのが理由です。
色はホワイト。生地はあえてポプリンに限定してデザインのバリエーション30個作ったんです。同じ生地、同じ工場、同じ縫製で、デザインだけを変えてやってみるという試みでした。
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