ストリートの雰囲気を持ちながら、バティック柄や独特のカラーリングなど、東南アジアのエッセンスを取り入れたプロダクト群で人気のブランド、RAJABROOKE(ラジャブルック)。
2019年にローンチしたブランドながら、BEAMSやWISM、乱痴気まで感度の高いセレクトショップで取り扱われているRAJABROOKEは、ほぼ毎シーズン「ソロテックス」を採用したアイテムをリリース、そのルックスと機能性、そして着心地のよさから、人気を博しているという。
ユニークなブランドの成り立ちから、服作りに対するこだわり、そして「ソロテックス」を採用し続ける理由まで、デザイナーの牛田祐輔氏に話を聞いた。
僕は、もともとサングラスのブランドやPR会社に勤めてはいましたが、特に洋服の作り方は誰かの元で修行したなどの経験もなくって。右も左もわからない状態のまま、RAJABROOKEを始めたんです。
自らが幼少期を過ごしたマレーシアをテーマに、日本古来よりある手ぬぐいや風呂敷などにグラフィックを落とし込んだのをスタートに、最初はほとんど趣味の延長としてはじめて、徐々にアパレルも作り始めました。
展示会やセールスなどを委託していた時期もあったんですが、2024年から、色々なタイミングも重なり、「一回、全部一人でやってみようかな」と考えて、1人でマイペースに続けています。僕が好きな先輩や友達は、たまたまこのスタイルが意外と多いっていうのも影響してるかと思います。
洋服を作り始めてから、生地屋さんのスワッチで「これいいな」って思うものが「ソロテックス」ってことが何回かあって。いくつか洋服を作って、いろんなところに卸したりしていたんです。
そのうち、BEAMSでいつもお世話になっているバイヤーさんから「帝人フロンティアの『ソロテックス』を使ってるでしょ、担当の人がデザイナーさんと会いたがってるみたいだよ」って教えてくれて。
どうやら帝人フロンティアの担当の方がRAJABROOKEのアイテムを気に入ってくれたらしく、その方を紹介いただいて、展示会などにもお邪魔させてもらうようになったんです。何も知らずに「ソロテックス」を使っていたら声を掛けていただいて、嬉しかったですね。
展示会を訪れて初めて、「ソロテックス」は実は繊維のことで、それを使って布帛やジャージなどさまざまな布が作られているんだな、って認識したんです(笑)。
自分自身、手がかからない洋服が好きな方で。まずは扱いやすくて、イージーケアという点ですね。日本人としてのこだわりみたいなものはありますが、「お手入れ」という概念が自分は苦手で、東南アジアがテーマということもあり、旅行の時でもすぐ乾くというのも重要。
さらにストレッチや形態回復性など機能性も高く、ガシガシ洗ってもへたらないし、あまり色落ちもしないので、長く愛用してもらえる。
それに加えて、艶がある生地感や発色の具合など、見た目も好みなんです。もともと化学繊維のテクニカルな雰囲気が好きっていうのも大きいですけどね。
RAJABROOKEは今年で7年目なんですが、「ソロテックス」を2シーズン目ぐらいからほぼ毎シーズン使っていて。
年を追うごとに、布地のバリエーションもどんどん増えていっている。「ソロテックス」の可能性は無限大じゃないかと思うほどで、本当に驚きますね。
正直、RAJABROOKEで1番使ってる繊維なんじゃないかと思います。
まずはこちらが、表地に「ソロテックス」、裏地に中綿代替とした「オクタ」を使用したベスト。
軽量で遮熱性があり、吸汗速乾性にも優れた「オクタ」が中綿代替として使われていて暖かく、裏地はメッシュになっているので蒸れにくい。初秋から春先まで、インナーとしてもアウターとしてもロングシーズン着られるベストだと思います。
表地は帝人フロンティアの「ソロテックス サイネックス 」。高密度でオックス組織の「ソロテックス」が使われていて、形態安定性に優れているのでほとんどシワにならないんです。
こちらは、デイリードーズという古着屋さんとの別注だったので、先方とのアイデアを合わせたのですが、ボクシングのグローブのようなポケットがついた、ヴィンテージのアイテムから発想したデザイン。古い雰囲気のデザインを、あえてテック系の布地で仕上げたというのがポイントですね。ステッチ違いでグリーンとネイビーの2パターンを用意しています。
「ソロテックス」にコーデュラとウールをミックスした、摩耗強度とストレッチ性に優れたコンバットウールと呼ばれる素材を採用しています。ウール混ではありますが、サマーウールのような雰囲気で、年間を通して快適に着用できると思います。
形はここ最近のブランド定番となっている、一見普通ですが、少し変わった3パネルキャップ。普通のクラシックなキャップに見せかけて、内側にはしっかり汗どめテープが施されていたり、ストレッチ性があったりと機能的に仕上げています。
通常ではスーツに使われる生地とのことですが、意外とこんなカジュアルなアイテムにもマッチしている。そんな意外性も面白いですよね。
シャツや小物、色々ありますが、ここ数年だと中間着と言われるアイテムの人気が最近上がってきていて。
ベーシックなクルーネックというより、立ち襟のジップアップだったり、首もとに切れ込みが入ったりしたデザインが多いですね。インナーによって雰囲気が変わるのが好きなんです。
この生地も「ソロテックス」、つまりポリエステル100%なのに、見た目はかなりコットンのスウェット地っぽいですよね。スウェットのように1枚でもアウター的にも着られて、しかもへたりにくい。今回持ってきたのは、僕がかなり着たおした現物なんですが、ほとんどヨレたり色褪せたりせず、新品のような風合いを保っている。改めて「ソロテックス」の底力を感じましたね。
黒やネイビーの生地もあったのですが、こんな雰囲気のある黄緑で作りたくて、好きな色に染めさせてもらいました。
これはかなり人気があったので、また作りたいと思っています。できればまた染めさせて頂いて、濃いめのネイビーにしちゃおうかなって思っています。
ジュエリーやホーム雑貨、最近だとぬいぐるみやキャンドルなど、自分自身が「あったらいいな」と思うものを制作しています。写真はノベルティのキーホルダーと、ブランドの原点とも言える手ぬぐい。
学生時代から好きだった、ステューシーやエイプなどのストリートブランドのように、ライフスタイルまで組み込んだブランドになれればいいなって思ってるんです。
変わり種では、大阪は京町堀のカレー屋、pimer curryとコラボしたオリジナルカレーや、レコード中心に雑貨などをセレクトしたショップ、ISANDLAとのコラボで、ラジャブルックのアジアンバティックを落とし込んだ、レコードプレーヤー用のスリップマットなども制作しました。
さらに次のシーズンでは、今までちょくちょくやってたのですが、初めてオリジナルの音楽アルバムも出すんです。すでにSpotifyやApple Musicなどの配信はちょっとずつ始めています。僕は音楽も好きで、周りにも素敵な音楽活動をしている人たちがたくさんいるので、オファーをかけて、ラジャブルックのために曲を作ってもらうというのを、引き続き続けていきたいと思います。
化繊らしいテクニカルな見た目のアイテムも好きですが、天然素材のような雰囲気の「ソロテックス」がもっと増えると、さらに作りたいアイテムの幅が広がるんじゃないかな、と思います。
今回お持ちした「ソロテックス」のジップアップカットソーのように、コットンのような風合いでありながら、扱いやすくて劣化しづらいのであれば、最高ですよね。
しっかりとしたウールの雰囲気がありながら、「ソロテックス」をミックスすることで、軽くて取り扱いやすいウール混の生地なども使ってみたいですね。
もちろん、経年劣化を楽しめる天然素材も歴史を感じられるのですごく好きです。ただ、自分の中で一軍(結局日常でよく使う)洋服の条件は、やっぱり着心地の良さと扱いのしやすさ良いバランスなのかなと思います。
これからも進化し続ける「ソロテックス」を使いながら、長く愛されるアイテムを作り続けたいと思っています。