SOLOTEXT

2025.01.10 Fri

日本古来の技術を世界に発信し続けるKUONが、「ソロテックス」を採用した理由とは。

「新しいものは古くなるけれど、美しいものはいつまでも美しい」というコンセプトのもと、2016年にスタートしたブランド、KUON。

日本の伝統的な織物の技術を現代の洋服に落とし込むことで、世界中のファッショニスタから評価を得ている同ブランドは、2023年AWシーズンから「ソロテックス」を採用したアイテムをリリースしている。

KUON設立までの経緯や、古布に対する思い、そして「ソロテックス」を採用した理由について、デザイナーの石橋真一郎氏に話を聞いた。


 

KUONはブランド当初より「ボロ」に代表される美しい古布や、「刺し子」や「裂き織り」など日本伝統の技術を現代的な洋服へと落とし込んでいますが、そのようなコンセプトに至った経緯をお教えください。

僕は盛岡出身なので、子供の頃からおばあちゃんの家やお寺などで「ボロ」や「刺し子」などを目にしていて。洋服を作るようになって、長い時間を経て作られる「ボロ」の質感ってとても贅沢なことだなと再認識したんです。

さらに、藍染は虫がつかないようにするためだったり、刺し子は生地を補強する目的で施されていたりと、生活の中で生まれてきた知恵や、「もったいない」という美意識が洋服に結実している。着物の帯などで使われる吉野格子という柄は、いわゆるリップストップになっていたりもするんです。

そんなストーリーに満ちた日本の伝統的な布地を、現代的なファッションに落とし込むことで、世界に提案していきたい、という思いでKUONをスタートさせました。

 

KUONでは古布と新しい布を併用していますが、その相性などはどのように考えられているのでしょうか?

僕たちが生活する中で、いま着たいもの、かっこいいなって思うものを作りたいと思ってるんです。

だから新しい生地だから使わないということは全くないですし、普通に生活する際に全身ボロで揃えるというのもちょっと違いますよね。そのバランスを考えながら、デザインするようにしています。

 

「ソロテックス」をいつごろから使い始めていますか?

もともと名前は聞いたことがあったのですが、帝人フロンティアの方にさまざまな種類の「ソロテックス」を紹介していただく機会があって。パッと触った感じで「これいいね!」って思いました。

上質な感触や軽さ、ハリや光沢感に加えて、型崩れしにくくシルエットを作りやすい点が気に入って、2023年のAWシーズンにはウール混の「ソロテックス」を使ったテーパードシルエットのパンツを製作しました。

ウールの良さにポリエステルの強度と扱いやすさがプラスされて、軽くて肌離れもいい。1年履いてその良さを実感したこともあり、今期でも採用したいと思いましたね。

 

KUONの今回のコレクションテーマである、”20XX”とは、どのようなものなのでしょうか?

世界が悪い状況になったとしても、ファッションを通してポジティブなメッセージと希望を届けていきたい、というKUONのメッセージが込められています。

 

「ソロテックス」を採用したリバーシブルボンバーコートについてお教えください。

西洋の洋服をベースにしながら、日本の美意識も加えたコートを作りたい、と考えて、MA-1をベースにしながら、着物の雰囲気も取り入れたロングコートです。

 

片面は上品な艶感のある「ソロテックス」を、もう片面はウールカシミアを使っており、軽やかでエレガントなシルエット。

生地はあえてミリタリーのイメージから離れたものを使うことで、着物ともMA-1とも違う、独特の雰囲気に仕上げることができたと思います。

このリバーシブルボンバーコートは、「TOKYO FASHION AWARD」の審査員も務め、ニューヨークの有名な百貨店のバイヤーも手がけているファッションコンサルタント、ニック・ウースターさんにもご購入いただきました。

 

こちらは「ソロテックス」の中綿を使った、サシコノラギ。

モッズコートのライナーのイメージに、日本の野良着のディテールをプラスした一着です。日本の伝統的なひょうたん柄を手刺し子で全面に施しているため、温かみと上品さを兼ね備えた雰囲気に仕上がっていると思います。

この中綿は「ソロテックス」原料を中空状にしたものを使用しているため、軽くて保温性に優れており、見た目以上に暖かく過ごせるはず。中綿は2種類の候補があったのですが、サンプルを作ってみて、刺し子を施した際にシルエットが綺麗に仕上がる「ソロテックス」のものを選びました。

 

「ソロテックス」を採用した洋服を作ることで、考えることなどはありますか?

経年変化の良さももちろんあるんですけど、長く着続けることができる丈夫さもすごく大事なことだと思っていて。「ソロテックス」はしなやかに伸びて膝抜けなどの劣化を抑えることができるため、長く愛用していただくことができると思います。

ポリエステルは比較的丈夫で作業着などに使われることも多く、量産型のようなイメージがあるため、従来のコレクションブランドでは避けられる場合もありますが、今回のように「ソロテックス」を使うことで、上質な質感のコートに撥水性をプラスすることも可能ですし、僕らはネガティブには捉えていません。また、近年ではそのような考え方も薄れてきているように思います。

KUONでは補修も行なっていますし、日本古来の伝統と最新技術を組み合わせた洋服を長く着続けてもらうことで、「ボロ」や「刺し子」などの文化を未来に伝えていければと思っています。

 

今後「ソロテックス」をこんな商品にも使っていきたい、などの考えはありますか?

インディゴ染めの糸と「ソロテックス」を組み合わせた生地などは、非常に興味がありますね。さらにコットンやウール、麻などの天然素材とミックスすることで、シワを防いで乾きやすく、劣化をしにくくするなど、機能性をプラスするなどの使い方にも、ぜひ挑戦できたらと思っています。

ポリエステルの可能性は無限大だと僕は思っていて。今回使わせて頂いた「ソロテックス」は、非常に上品な質感で機能性も高く、満足しています。

今後も進化し続けていく「ソロテックス」には、注目していきたいと思っています。