創業160年余り、日本を代表する繊維専門商社のスタイレム瀧定大阪。
さまざまなテキスタイルの企画から販売まで行うだけでなく、アパレルやライフスタイル製品なども開発。上質かつトレンドを捉えた商品で、アパレル関係者からエンドユーザーまで高い評価を得ている。
さらに2018年にローンチした自社ブランド、+CLOTHET(クロスクローゼット)がリリースした、立体的で上質な「テーラードTシャツ」は累計販売数万着を超えるヒットに。ファクトリーブランドの枠を超え、ファッション好きの間でも人気のブランドへと成長した。
そんなテキスタイルのプロフェッショナルが手がける+CLOTHETにおいて、ブランドローンチ時から採用され続けているのが「ソロテックス」だ。世界中の繊維を知り尽くした同社は、「ソロテックス」のどこに魅力を感じているのか、そして今後「ソロテックス」に求めることとは。+CLOTHET課 課長の岡田敏雄氏に話を聞いた。
「ソロテックス」の生地を取り扱い始めてから、もう20年ほどになります。
しわになりにくく高いストレッチ性を持つなどの機能性はもちろんですが、どちらかというと高級感があり発色が良いなどの生地感に魅力を感じており、厚手の「ソロテックス」はブルゾンやコートに最適だなと思っていました。
私はその当時営業職で、百貨店のアパレルやセレクトショップなどを担当していたのですが、感触や光沢感、発色の良さなど、当時かなり斬新な素材と感じたのを覚えています。さらにインポート生地のような品の良さも持ち合わせており、かなりの数のお客様に採用して頂きましたね。
「ソロテックス」はウールやコットンなどとミックスした際には素材の表情を生かしてくれますし、比較的低めの温度で綺麗に染まり色落ちしにくく、しかも太さのバリエーションもあるなど、非常に扱いやすい素材だなと感じましたね。
今回ご紹介する「リアクティブデニム」の生産は広島のデニム工場で行っており、通常太めの糸を使用している織り機で細い繊維の「ソロテックス」を織るのは難しそうにも思えたのですが、少し調整するだけでうまくいったと聞いています。
そういった扱いやすさも、多くのメーカーさんで採用されるポイントなのかと思いますね。
立ち上げの時から「ソロテックス」を使ったオリジナルの生地をぜひ使いたいと考え、ファーストシーズンにはストレッチの効いたジャケットと、シックな雰囲気のブルゾンを作りました。
当時はストレッチジャケットが流行りだした時期で、スポーティでシンプルな型のものが多かったので、+CLOTHETではテーラーの方にデザインを依頼してクラシカルな形で差別化を図りました。また、ブルゾンはパーツなどにこだわって、高級感のあるものにしました。
最初にご紹介するのは、+CLOTHETで「リアクティブデニム」と呼んでいる、反応染めを施したデニム風のストレッチ生地を採用した、ブルゾン・ジャケット・パンツです。
タテ糸にコットンを、ヨコ糸に「ソロテックス」を使用し、広島のデニムを手がけている工場で織っているため、程よく表情のあるデニムライクな生地となっています。
ストレッチデニムはポリウレタンを使うと経年劣化により膝抜けすることも多いのですが、「ソロテックス」を使ったこのリアクティブデニムは、ほとんど劣化せず色落ちや型崩れもしにくくなっています。
デニムジャケットは3rdタイプをベースにしたベーシックなデザインでありながら、 体のラインに合わせて肩線をデザインしており、 ストレッチも効いているため快適な着用感。
ジャケットはテーラー吉田泰輔氏が監修し、幅広ラペルに狭めVゾーンで、ディティールにこだわったクラシックな表情。デニムライクでありながら上品なため、さまざまなシーンで活躍してくれるかと思います。
パンツは 世界的に評価されているパンツ専業のテーラー、五十嵐徹氏によるデザイン。裾はダブル、後ポケットは3mm幅の細玉縁で仕上げつつ、ドローコードを使ったイージートラウザー仕様でも着用できるため、ドレッシーでありながら快適に過ごせるパンツです。さらにプレスが取れづらいリントラク加工※も施しているため、イージーケアで長くご愛用頂けます。
※スカートのプリーツやズボンのセンタープリーツなどの折り目の加工
スタイレムでは、「TECHWOOL」という、ウール素材に特殊な加工を施したオリジナルの機能素材を展開しています。その中で、カジュアルなウール生地の代名詞であるウールのシアサッカーに高級感を持たせつつ、「ソロテックス」で機能性も持たせた生地を開発しました。そこから生まれたのがこのジャケット&パンツです。
「ソロテックス」の特性から、ウールの上品な質感を持ちながら快適に着用頂けるようになっており、ネイビー・オリーブ・ネイビーストライプの3色展開。
こちらのジャケットもテーラー吉田泰輔氏の監修で、シアサッカーの持つ軽い雰囲気はそのままに、本格的なテーラードの仕上がりに。カットソーを合わせればリュクスカジュアルに、セットアップでシャツを合わせればドレッシーな装いにも使えます。
そしてパンツは五十嵐徹氏のデザインによるもの。ウエストにはタックが施されているので動きやすく、両脇のアジャスターを使ってベルトレスでも着用できます。
ブランドを立ち上げる際には、上質でありながら手の届きやすい価格帯にすることを大きな目標にしていました。そのため、店舗を持たず人件費も抑えた、WEBでの販売を基本としたブランドとなったのです。
ブランドをスタートして7年ほどですが、テーラーがパターンを監修し、上質な素材を使うことでジャケットにも映える「テーラードTシャツ」のヒットをきっかけに、ファッション好きの方々からも評価を頂けるように。ありがたいことにリピーターの方も年々増えており、原宿にあるスタイレムのショールームに加え、大阪や福岡でもシーズンごとに数回試着会を行っております。
通常は先にデザインがあって素材を選ぶことがほとんどかと思うのですが、+CLOTHETはいい素材が開発できたらそれに合う洋服を考えるという形で進めるんです。例えるならば「魚屋が始めた寿司屋」のような感じで、いい素材をシンプルに楽しんで欲しいと思っています。
おかげさまで、そのようなB to CがB to Bにつながる形での引き合いも少しずつ増えてきています。生地が最終的に洋服になったときの仕上がりを実際に見られるという良さもあるのかもしれません。
+CLOTHETの6割程度は定番品なのですが、それを時代に合わせてテーラーの方と相談しながら素材やシルエットを少しずつブラッシュアップするようにしています。カラーもブラック・ホワイト・ネイビー・グレーと、あえて絞った展開。過剰なデザインはせず、素材の良さを最大限に引き出すことを目指しています。
東南アジアなどの熱帯・温帯地域で自生する木の実から採れるカポックは、繊維の内部が中空になっており、ダウンの代替品として伝統的に布団などの中綿に使用されていました。しかしながら繊細で扱いが難しいことから、近年はダウンや合成繊維などにその地位を奪われていました。
+CLOTHETでは、環境への負荷が少なく、羽毛など動物素材の代替としての可能性もあるエシカルな素材として「カポック」に再びスポットライトを当てるべく開発を進め、製品化するに至ったのです。SDGsの意識がより高いヨーロッパなどでは非常に注目を集めている素材であり、弊社としても、今後もカポックを活用した繊維製品の開発にも取り組んでいきます。
50デニールという非常に細い「ソロテックス」を北陸の産地で超高密度に織り上げたもので、上品な光沢のある滑らかな仕上がり。シワになりにくく、型崩れしにくいのが特徴です。
「ソロテックス」の原料の一部は植物由来なので表地・中綿共に環境に配慮した製品となっています。
コットンやシルクなどの天然繊維と「ソロテックス」をミックスした素材や、「ソロテックス」100%を素材とした「テーラードTシャツ」はリリースしたいと思っております。ただ、他社さんでもそのようなTシャツは多くリリースされておりますので、それを超える機能性や素材感のものを作りたいと考えているところです。
高い機能性と上品な質感を持ち、取り扱いやすい「ソロテックス」は、生地メーカーとしてもブランドとしても非常に魅力的な素材。これまで以上に世界中に求められる素材となっていくと思います。
今後もさらなる開発を進めて頂き、質感も機能性にも優れた、環境にもやさしい素材ができることを期待しております。