SOLOTEXT

2020.04.15 Wed

「ファッションから釣りカルチャーを盛り上げたい」DAIWAの「思い」

釣り具のブランドとして60年以上の歴史を持ち、グローバルな人気を誇るDAIWA。そのDAIWAが、近年フィッシング業界だけでなく、ファッション界でも注目を集めているのをご存知だろうか。

佐藤可士和氏がブランディングやロゴデザインなどを手がけたD-VECは、Rakuten Fashion Week TOKYOでもコレクションを披露。

さらにDAIWABEAMSに監修を依頼して作り上げた新ブランド、DAIWA PIER39は、ストリートの雰囲気も感じさせながらフィッシングウェアのノウハウを生かしたディテールで評判に。2020年春夏のスタートながら、早くも商品の完売が続いているという。

その背景にあるのは、どんな「思い」なのか。アパレルマーケティング部で企画開発を手がける、佐藤雅基さんと黒田優さんに話を聞いた。

釣りブランドとして地位を築いてきたDAIWAが、なぜファッションのフィールドに進出しようと考えたのでしょうか?

私たちが60年以上DAIWAというブランドを展開してきた根本には、「釣りというカルチャーを広めたい」という思いがありました。それにあたって、ファッションから釣りに興味を持つ、というアプローチもあるのではないかと考えて、フィッシング以外の分野でもアパレルを展開したいと考えたのです。

 

DAIWAブランドとして2019FWに発表した、レインマックス® ジャガード レインジャケットは、ドイツで行われているスポーツ見本市・ISPOにてアワードを受賞したことでも話題になりました。

このジャケットは、これまで培ってきた技術を集結したコンセプトモデルと呼べるもの。ジャカード織で柄を表現しながら、縫製や止水テープの使用を最小限に抑えることにより、耐久性も着心地も高めています。実はこのロゴも生地に織り込まれているんです。それだけでなく、表面の縦糸には「ソロテックス」を使用した3レイヤー構造で、透湿防水素材のフィルムを挟み込んでいるため非常に防水性が高い。ジャカード織には群馬県の桐生織の技術を応用しており、労力も時間もかけて開発しました。

「ソロテックス」は成分の一部に植物由来の原料が使われた素材で、機能的でありながらサステナブルというのも、ISPOにおいて評価されたポイントではないかと思います。おかげさまで、海外や他ブランドの方々にも興味を持っていただき、DAIWAの持つ技術を多くの人に知っていただくことができました。

 

ここ23年、フィッシングベストなど、釣りのための洋服がファッションアイテムとして使われることも増えてきました。

DAIWAの製品も、私たちの知らないところでファッション的な使われ方をされているのを目にすることがありましたね。非常に驚き、嬉しかったのと同時に、大きな可能性も感じました。フィッシングベストに関しては、バッグを持たないという流れでも注目されていたのかなと思っています。

 

2020SSからスタートしたブランド、DAIWA PIER39は、よりストリートファッションに近い、デイリーに使えそうなラインナップですね。

「ファッションで釣りカルチャーの間口をさらに広げたい」という思いをBEAMSさんと共有して、アパレルの形に具現化したものです。企画や商品コンセプト、プロモーションなどはBEAMSさん監修のもとに行い、デザインやパターンなど実際のものづくりに関する事はDAIWAで行っています。

 

BEAMS監修のもと、ブランドの立ち上げから販売まで行ってみて、いかがでしたか?

同じアパレルとはいえ、全く違うフィールドなので面白かったし、非常に勉強になりましたね。フィッシングテイストは残しながら、私共には思いつかないようなファッションテイストをプラスして頂き、非常に素晴らしい商品を作り上げることができたと思います。

 

DAIWA PIER39は、どのようなショップで扱われているのですか?

実は、DAIWA PIER39は、BEAMSの店頭には並んでいないんです。その代わり、他のコンペティターともいえる感度の高いセレクトショップさんに扱って頂いています。単に「BEAMS」のネームバリューを借りることで商品を引き立てるのではなく、あくまで商品のクオリティで勝負したい、という新しいビジネススキームを今回は採用しています。これは、これまでのフィッシング業界では考えられないことではないかと思っております。

 

店頭での反応はいかがですか?

ファーストデリバリーが終わってすぐリピート発注されたアイテムがいくつかありました。特に「ソロテックス」を使用したジャケット&パンツが人気で、店頭で見つからないとユーザーの方からDAIWAへ直接問い合わせがあったくらい。大小さまざまなポケットが施されたフィッシングシャツも人気が高く、釣りに行く方でなくともファッションとして評価してもらえているのを感じています。

「ソロテックス」を使用したジャケット&パンツについて、さらにお話をお聞かせください。

Loose Stretch 2B Jacketは、現在ファッション界でトレンドと言われるワイドシルエットになっています。内側にはフィッシングベストのように多くのポケットがついており、ルアーボックスなども入れられる仕様。さらに襟もとにサングラスをかけるループがついているなど、随所にフィッシングメーカーとしてのノウハウを生かして仕上げています。Loose Stretch 6P Mil Pantsにも、ルアーボックスが出し入れしやすいように大きめのサイドポケットが付けてあります。ともに「ソロテックス」を使用しているので、物を入れてもシルエットが崩れにくく、ストレッチが効いていて快適に着用することができます。

 

「ソロテックス」はDAIWADAIWA PIER39など、多くのブランドでも採用されていますが、どのような経緯で使うことになったのでしょうか?

以前、私はDAIWAの母体であるグローブライドが運営するテニスブランド、Princeで開発を手がけていたのですが、その時にハイエンドラインで「ソロテックス」を採用していたんです。厚みがありながら柔らかく、ストレッチが効いた高級感のあるルックス。非常にバランスのいい素材だけあって、ここ最近アウトドアメーカーなども採用しており、一般にも認知されてきたため、釣りのアパレルでも使えるなと考えたのです。

 

そのほかの「ソロテックス」を使ったアイテムについてもお教えください。

こちらのTシャツはメッシュになっており、炎天下での釣りの際にも風通しが良く、汗でべたつきにくいのが特徴。バスフィッシングの愛好者の方は迷彩好きが多いため、独自のカモフラージュ柄でカラバリも豊富になっています。非常に発色がいいのも魅力ですね。

バスプロの内山幸也さんからも「一見硬そうな質感に見えますが、とても着心地がよく汗をかきやすい晴れの日でも肌にまとわりつきづらくて快適です。雨の時にも少しくらい濡れてもタイトな感じがしないのがいいですね!」というインプレッションを頂いています。

 

コーチジャケットはシンプルな形でシワになりにくく、品の良い素材感。気温の変わりやすい春から初夏のフィッシングに一枚持っていくと、重宝しそうですね。

 

さらにUNITED ARROWS green label relaxingからの別注で作ったパンツは、「ソロテックス」のシワになりにくいという特性を生かして、パッカブル仕様となっています。

 

「ソロテックス」を含め、新技術を使った繊維で、今後こんなことができればいいな、というものがあればお聞かせください。

例えば撥水性やストレッチ性能の高いコーデュロイ、なんてものがあると非常に面白いですよね。

また、TEIJIN FRONTIERさんにはエアロカプセルという中空の繊維がありますが、その技術を使って水面に落としても浮く洋服やグッズなどを協業して作ることができればいいな、と考えています。