世界的なスポーツメーカーであるデサント“le coq sportif”と、日本を代表するセレクトショップUNITED ARROWSの“GREEN LABEL RELAXING”がタッグを組んだアイテム群が、2020年の春夏にリリースされる。その多くには、TEIJIN FRONTIERの「ソロテックス」が採用されているという。そこに至るまでの経緯とデザインのプロセス、そして各アイテムの魅力について、プロジェクトを手がけたle coq sportifの伊藤チーフデザイナーと、UNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXINGの坂下ディレクターに話を聞いた。
UNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXING 坂下ディレクター(以下GLR)TEIJIN FRONTIERの「ソロテックス」担当の方から、ストレートに「スポーツメーカーであるle coq sportifと、仕立ての良いスーツでも知られるUNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXINGが手を組んだ、本気のものづくりを見てみたい」というお話を頂いたのが始まりですね。
le coq sportif 伊藤チーフデザイナー(以下LCS)TEIJINさんからの要望は「それぞれのブランドの長所を生かしながらディレクションしてほしい」というものでした。le coq sportifは、ツールドフランスのオフィシャルスポンサーでもあり、ツーリングウェアの機能をライフスタイルウェアに盛り込んだジャケットのセットアップなどをLE URBAN STYLEレーベルで展開する中で、「ソロテックス」も採用していました。ただ、弊社はスポーツウェアメーカーなので、テーラードのディテールを再現するにも限界がある。そんな中でのご提案だったので、非常に興味が湧きました。
GLR僕はUNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXINGの中でもスーツを中心に扱っているのですが、最近は店頭においてもビジネスシーンの変化を感じることが多くなってきて。もちろんドレススタイルを好む方も変わらず多くいらっしゃるのですが、従来のスーツよりも扱いやすい、例えばライトセットアップのようなイージーなものを幅広い層のお客様が求めているように感じていました。加えて、スポーツやアウトドアなどのフィールドとファッションを融合させた、新しいスタイルを提案したいというタイミングでのお話だったので、是非ご一緒したいな、と。
LCS自転車通勤などのスポーティなシーンに向けた、動きやすく快適という機能面だけでなく、ビジネスのシーンでも映えるもの、というコンセプトのもと、ストレッチ性能はもちろん、ウール見えするなどビジネスにも対応できるものを目指しました。
GLRフォーマルなスーツを作り続けているUNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXINGとしては、見た目の美しさも当然ながら重要な要素。ですから、パターンにも相当こだわっています。ジャケットを例にとると、襟の返りや肩の自然なライン、胸のボリュームなどがジャケットの美しさを構成する重要な要素。そのため、奇を衒わずに、基本に忠実に美しいシルエットを作り上げることを心がけました。
LCSお互いの知見を持ち寄ってこそ実現できたプロジェクトだと思いますね。le coq sportifとしては、パンツで採用していたパターンを応用して、後ろ身頃から腕まで一枚で仕立てるオリジナルのパターンを作りました。それをベースに、UNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXINGさんならではのディテールを加えてシルエットを調整していくというデザイン工程を経ることで、le coq sportifとUNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXING双方の持つ背景を生かした、本当にいいとこどりのアイテムを作ることができたと思います。
LCSいま着ているこのコートは「ソロテックス」を使ったものなのですが、撥水性能があり、ストレッチが効いていて動きやすい。(注) 一見するとオーセンティックなシルエットのステンカラーコートなのですが、背中から腕にかけての動きやすさを考慮したカッティングに加え、止水ポケットや柔らかいボタンなど細かいディテールにもle coq sportifのスポーツブランドとしての
知見を盛り込んでいます。
(注)このコートの素材は、「ソロテックス」に撥水加工を施しています
GLR襟にはフードが内蔵されているのですが、ボリューム感がありながら美しく見えるようにデザインしてあります。アクセントになったイエローのフードは、自転車などで通勤する際のちょっとした雨にも対応。ビジネスシーンにもしっかりと対応しながら、機能性も高いコートを作ることができたと思っています。
LCS4月にローンチされるシャツにはle coq sportifで展開しているネクステップパンツのパターンを応用しており、動きやすくて滑らかな肌ざわり。シワになりにくく、即乾性にも優れています。
GLR2019年の春夏は、クールビズの影響もありポロシャツなどが反応が良かったので、フルオープンタイプでありながら着やすいものをと考えたんです。ノーネクタイのシーンを想定して、台襟の立ち上がりにも気を配りながら、収まり良くコンパクトな襟先に仕上げました。ドレスシャツの工場で仕立てているので、シルエットにも自信があります。
GLR「オクタ」は空気を含んだ中空の糸で、ライトウェイトでウォッシャブルでありながら暖かい。そこに「ソロテックス」を加えることにより上品なルックスでありながら型崩れもしにくいため、スウェットのようにデイリーに着ることができる。その強みを生かすため、あえてベーシックなデザインにしています。
LCSこちらのパンツは、デサントの野球向けスライディングパンツのパターンをベースに、自転車向けにアレンジしています。膝の曲げ伸ばしが非常に楽にできるんです。
GLRベースが非常に考えられたパターンだったため、そこを基本にしながら、ビジネスシーンでも映えるようにステッチを極力なくしてベルトループを細くするなど、ディテールをエレガントにブラッシュアップして仕上げました。自分で着用してみても思った以上に快適で、長く着ることができるアイテムだと思います。
LCSパンツだけ買って、その着心地が気に入ったからとジャケットを買い足して組み合わせを楽しむというお客様もかなり多いんです。小手先のデザインではなく、それぞれの強みを生かしながらしっかりと「協業」して製品に落とし込んだコラボレーションになっていると思います。
GLRよく言われることではありますが、「ファッションとスポーツ、ビジネスの融合」というテーマにしっかりと向き合って、le coq sportifとUNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXING、そしてTEIJIN FRONTIERの3社で誠実に作り上げたアイテムばかり。ぱっと見はベーシックでありながら、素材やディテールに機能性が盛り込まれているので、ぜひ一度袖を通して頂いて、その着心地やシルエットに驚いてもらえればと思います。