伊藤 壮一郎

Soichiro Ito

Special Interview
2021.08.16 Mon

03. 「ソロテックス」の魅力は、その確かな品格にある

 

素材や縫製、デザインと服作りには様々な要素がありますが、今最も重視していることは何ですか?

 

正直どれも重要で、取り組むプロダクトによっても違うと思いますが、今は“縫製しない服”にチャレンジしてみたい気持ちがあります。スポーツウエアにはみられるアプローチだと思いますが、そういう方法でパックTみたいのものを作ったらどうなるだろうとか考えています。アメリカのトラディショナルなモチーフを、僕らのオリジナルのアプローチでやってみたいんですよね。

今回のインタビューの中でも素材についての言及はいくつかありましたが、その点についてはいかがでしょうか?

 

素材に対しても考え方が変わってきていて、以前は天然素材の風合いをどう活かしていくかに面白みを感じていました。今はもっとテクニカルなアプローチになっている気がします。例えば、天然繊維に見えて実はものすごく伸びるとか、普通に見えるけど普通じゃない“驚き”を求めるようなイメージです。料理って見た目で大体味が想像できると思うんですが、食べてみたら全然違う美味しさだった、みたいな(笑)。

 

 

soeでは「ソロテックス」も頻繁に使用されていますね。

 

そうなんです。この取材のお話をいただくまでそんなに意識していなかったのですが、確かによく使わせてもらっているんですよね。しかも何シーズンも前から。

 

 

無意識的に選んでいたんですね(笑)。ご自身として、なぜ「ソロテックス」を選んでいるんだと思いますか?

 

風合いがいいんですよね。圧倒的に品がある。soeが素材を選ぶ時の最初の基準は、機能というよりあくまでビジュアル。そこに機能性がついてきていたらなおいいという発想なんです。その点において「ソロテックス」は素材自体はもちろん、服として出来上がったときの見栄えが抜群にいいんですよね。機能が先行したものではなく、しっかりとファッション的だと感じます。

伊藤さん的には上質に見える素材を選んだ結果、そこに高い機能性も付随してきた、という感覚でしょうか。実際、近年の化繊素材の品質はますます上がっていますよね。

 

特に日本の技術はすごいんじゃないでしょうか。僕も輸入されたものや様々な素材を手に取りますが、やはり品質が全然違うと思います。先程も言いましたが、特に洋服になった時に違いが出るという印象です。きちんとそこまでイメージされて作っているんだろうなって思うんです。海外のメゾンからも人気なのもよくわかります。

 

 

今後、素材に期待することはありますか?

 

もちろん、たくさんあります。中でも環境への配慮という視点の素材作りには期待しています。例えば、最近注目しているSave The Duckというブランドは動物性素材を使わない服や100%プラスチックボトルのリサイクル素材の服を提案しているのですが、それでいて洋服としてのクオリティも抜群に高い。これも後で知ったのですが、その素材の一部をteijinが提供しているんですよね。それを知った時も本当に驚きました。日本の技術力を生かした素材はここまできているんだと。

サステナブルとファッションはとても難しい問題です。サステナブルを語ればファッションから遠ざかっていくし、ファッションを語るとサステナブルを提唱しづらい。僕自身、そこにまだ答えを見出せていませんが、これは高いレベルで一つのアンサーを提示している理想的なプロジェクトのひとつだと思います。soeとしてもいつか、そういった取り組みができれば素晴らしいと思っています。

伊藤 壮一郎Soichiro Ito
高校卒業後、渡英。帰国後、青山学院で経済史を学ぶ傍ら、独自で服づくりをはじめる。2001-2002 秋冬シーズンより〈soe〉をスタート。2008年にシャツ専門のレーベル〈soe shirt〉を立ちあげ、2013年にオリジナルのコンセプトショップ〈M.I.U〉をオープン。2016年にはパリでコレクションを発表するなど、どこか実験的な試みでファンを魅了し続けている。2018年にデザイナーを退き、現在はディレクターとしてブランドを監修。