根岸 由香里

Yukari Negishi

Special Interview
2023.04.27 Thu

03. 今は素直に、未来に期待しかないと思っています

 

現在、具体的に進めているプロジェクトについて教えてください。

 

たくさんあるのですが、千葉県匝瑳市のソーラーシェアリングはその中でも大きな取り組みです。耕作放棄地だった畑にソーラーパネルを設置しているのですが、パネルは高所に取り付けられるので下の農地で農作業が可能。さらに休耕地だった場所で有機の不耕起栽培を行うことでCO2発生量の低減にも繋がります。今は3号機まで稼働していて、これから4号機も作られる予定です。

私たちは2030年までにロンハーマン事業のCO2排出量(スコープ1・2)をゼロにする目標を掲げていますが、ロンハーマンのお店は商業施設などにも入っているため自分達の力だけではそれを達成することはできないんです。だったらその分、自分たちで再生可能エネルギーを作ってしまおうというのがこの取り組みを始めたきっかけです。

他にはコットンのトレーサビリティの取り組みも進めていますし、そういったことを通じてお客様自身が農家の方々へ支援することができる仕組みづくりもスタートしています。

 

 

お客様の反応はいかがですか?

 

そういうものにとても関心が強い方からそうでもない方まで、まだまちまちです。でも実は私は、お客様がそこに高い関心を抱かなくても別にいいと思っています。関心が高くない方でも、意識しなくともご購入される商品が環境や人権に配慮されているようにしていくことが大切です。最初に言ったようにファッションはワクワクするもの。何かの問題意識が先に立ってしまっては、そもそもの楽しさが失われてしまいますから。その順序を間違えないように取り組んでいきたいと思っています。

逆に、社内での反応はいかがですか?

 

最初は考え方を共有するのに時間がかかりましたが、今はもうみんなすごくポジティブに捉えてくれていて、受動的ではなく能動的にいろんなことに取り組んでくれるようになりました。ファッションのワクワクを保ちながら、なおかつ環境問題にコミットしたものづくりができた時、みんな本当に晴れ晴れした顔をしているんです。それを見た時、ああ頑張ってやってきてよかったなって思います。

 

 

サステナブルと素材はとても密接な関係にあると思いますが、それについてはどのように考えていますか?

 

ロンハーマンは、洋服作りにおける主要素材を2025年までに今の段階での一番サステナブルなものに100%変えるということを宣言しています。主要素材であるコットンに関しては、オーガニックコットンやリサイクルコットンなどさまざまな選択肢があり、その都度、何ができるかをみんなでディスカッションして進めているところです。

生地メーカーさんも本当に頑張ってくれていて、最近はとてもいい生地が増えています。2年前と比べたら大違い。当時はサステナブルをテーマに掲げるだけで選べる生地は限られてしまって、デザイナーもいろんなクリエーションを諦めながら商品を作るしかありませんでした。でも今はそんなことはなく、デザイナーも楽しみながらサステナブルに取り組めるようになった。これはとても嬉しいことです。

 

 

帝人フロンティアの「ソロテックス」はご存じでしたでしょうか?

 

もちろん。「ソロテックス」といえば機能性にフォーカスがいきがちですが、弊社では環境に配慮した「ソロテックス」を多用させていただいています。「ソロテックス」の素晴らしいところは、環境に優しいからという理由で選んでいるのではなく、素材の風合いや質感、佇まいが良くて選んだら、それがたまたま環境にも優しかったというところ。これはデザイナーにとって、ひいてはブランドにとってとても助かること。妥協せずものづくりに集中できるということですから。その進化には本当に驚きます。

サステナブルを意識するとファッションはつまらないものになるという考え方を持っている人は、まだ少なくありません。

 

その考え方はもう古いかもしれません。「ソロテックス」をはじめ、今は環境に配慮しながらクオリティの高い素材がたくさんあります。まさに切磋琢磨。私たちがそれをどう活用していくかにかかっているんじゃないでしょうか。

 

 

今後、生地や素材に期待することはありますか?

 

今は期待しかないですね。素材や生地が進化すればするほど、ファッションはきっと楽しくなる。デザインの力と融合した時にとても大きなパワーを生むと思うんです。サステナブルを意識しながらも制約のない生地選びができるなら、デザインをする側としてはこんなに嬉しいことはない。作る側がワクワクできないと、お客様にワクワクを届けることはできませんから。

では最後に、根岸さんが今後活動を続けていく上で、大切にしたいこととは?

 

楽しく面白くやってかなきゃ駄目だなと思っています。一番大事なのはお客様に届けようとしている自分たちがワクワクして楽しくって胸を張れることかなと思っているので、それを自分たちだけじゃなくって、本当に繋がっている、一緒にもの作りをする様々な方たちと歩んでいけたら、それが良い未来を作れると本当に思っています。

根岸 由香里Yukari Negishi
1977年栃木県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業。セレクトショップで販売、企画、バイイングなどを勤めたのち、2008年、ロンハーマン立ち上げ時にサザビーリーグに入社。バイヤーを経て、2016年にリトルリーグカンパニー執行役員兼ロンハーマン事業部事業部長兼ウィメンズディレクターに就任。
Born in Tochigi Prefecture in 1977. Graduated from Fashion Styling Course, Fashion Marketing and Distribution Department of Bunka Fashion College.
She engaged in sales, planning, buying, etc. at a select shop, followed by joining SAZABY LEAGUE, Ltd. in 2008, when RON HERMAN was launched.
After working as a buyer, she assumed the office of Executive Officer of LITTLE LEAGUE COMPANY and RON HERMAN Business Division Director / RON HERMAN Women's Director in 2016.