
そもそも、MONOLITHはどのようにして生まれたブランドですか。
母体は、100年以上にわたってランドセルを作り続けてきたセイバンです。少子化などを背景に新しい事業を考える中で、「何か新しいことをやってほしい」とご相談をいただいたのが始まりでした。そこで考えたのが、セイバンが長年培ってきた「背負うためのバッグ」のノウハウを生かし、今度は大人に向けて活かせないか、ということです。子どものランドセルではなく、大人のためのバックパックを作ってはどうだろう、と。それがMONOLITHの出発点でした。そこから約2年かけて、構想からブランドコンセプト、商品開発から店舗のあり方まで、幅広くディレクションしています。デビュー第一弾がバックパックだったのも、セイバンが積み重ねてきた歴史を、今の時代へ自然につなげられると思ったからです。

これまでのラインには、どのような違いがありますか。
MONOLITHには「STANDARD」「OFFICE」「PRO」という3つのカテゴリーがあります。ブランドの根幹になっているのが、最初に作った「STANDARD」です。ナイロンの中でも比較的細い糸を使い、機能と汎用性のバランスを取ったラインとしてスタートしました。そこから、ポケットの数やハーネスの形状など、機能をどんどん積み上げて、簡単に言えばスペックアップさせたものが「PRO」。それをもう少しビジネスユースに寄せたものが「OFFICE」です。方向性はそれぞれ違いますけど、「STANDARD」が全てに基本になっています。それぞれ用途に合わせて発展していますが、すべての基礎になっているのは「STANDARD」です。今回の「STANDARD Neutral」も、その考え方を受け継いでいます。
新たな「STANDARD Neutral」は、どのような課題から生まれたのでしょうか。
従来の「STANDARD」は、MONOLITHの中では、最も幅広い方に使っていただくためのラインとして位置づけていました。それでも購入者の約8割が男性だったんです。採用しているナイロンは非常に丈夫で、道具としてはすごく頼りになる素材です。ただ、いくら比較的細い糸を使っているとはいえ、女性や若い方にとっては少し重く、ゴツゴツとした男っぽいアイテムに見えてしまう。そこはずっと気になっていました。MONOLITHをもっと幅広い方に使ってもらうには、もう少し軽く、柔らかくて、気軽に持てるものが必要だろう、と。そこから生まれたのが、「STANDARD Neutral」です。“ニュートラル”という言葉の通り、年齢や性別、スタイルを限定せず、誰にでも自然に馴染む存在を目指しました。

「STANDARD Neutral」にSOLOTEX® SYNEX®を採用した決め手は何でしたか。
軽さとしなやかさが、今回やりたかったことにすごく合っていたからです。ただ、軽くて柔らかな生地は、言葉を選ばずに言うと、一歩間違えると安っぽく見えてしまうものもあります。バッグにしたとき、生地の印象がそのまま製品全体の印象につながるので、そこは大きな課題でした。SOLOTEX® SYNEX®以外にもいくつかの生地を検討して、実際にサンプルまで作りました。でも、並べてみると、もう全然見え方が違ったんです。SOLOTEX® SYNEX®は独特のしなやかさがありながら、適度なハリもあって、形がきれいに保たれる。結果として、軽いのにきちんと高級感のある佇まいになりました。この見え方は、ほかの生地ではどうしても出せなかったんです。正直、決して安い生地ではありません。価格のことを考えると迷いもありましたけど、最終的には「もう、これで頑張ろう」と決めました。やっぱり、製品になったときの見え方は譲れませんでした。
素材の機能が、そのまま美しさにつながったということでしょうか。
そうだと思います。SOLOTEX®には、らせん状の分子構造から生まれる柔らかさや形態回復性があります。言葉だけで聞くと少し難しいですけど、製品にすると、しわが元に戻りやすい、輪郭が崩れにくい、独特のしなやかさが出る、といった違いとして表れるんです。これまで、ブランドプロモーションなどを通じて、多くのデザイナーさんから「ほかのポリエステルとは質感が違う」、「ドレープが出すぎず適度なハリがある」といった声は聞いていました。ただ、実際にMONOLITHの試作が出来上がるまでは、その違いについて半信半疑なところもあったんですよ(笑)。でも今回、ほかの生地を使った試作品と並べてみて、「ああ、みんなが言っていたのは、これか」と、ようやく実感できました。

もともとは衣料用の生地ですが、バッグに採用するうえで難しさはありましたか。
かなりありました。もともと洋服のために作られた生地なので、そのしなやかさを生かして、身につけている服に自然に馴染むバッグにしたかったんです。ただ、洋服とバッグでは、求められる強度が異なります。バッグには引き裂き強度などの明確な基準があるので、生地の裏側にコーティングを施して、強度を高める必要がありました。まず生地の状態で試験をして、そこからバッグを作り、製品になった状態でもう一度試験をする。実際に出来上がったものをテストするまでは、基準をクリアできるか分からなかったんですよね。SOLOTEX® SYNEX®の風合いを残しながら、道具として必要な耐久性を持たせる。その両立にはかなり苦労しました。
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