
「STANDARD Neutral」は、従来モデルと比べて素材以外の仕様も変わっていますか。
単に生地を軽くしただけではありません。ポケットの数や裏地、ハーネスなど、全体の構造を一から見直しています。機能って、積み上げれば積み上げるほど便利になるんですけど、その分だけ重くなるし、気軽さもなくなっていくんですよね。「STANDARD Neutral」というコンセプトの中では、過剰な機能が、かえってマイナスになると思いました。そこで、必要な機能だけを残して、できる限り簡素化しています。生地が軽くなったのに、ハーネスだけがしっかりしすぎていてもバランスが悪いじゃないですか。だから、それぞれのパーツも含めて、全体がきちんと釣り合うように軽やかに整えました。
従来モデルより、展開サイズがやや小さいのも特徴です。MONOLITHを立ち上げた2020年頃と比べても、求められるバッグのサイズは少しずつ小さくなっています。今は男性でも、ナップサックのような小さなバッグを持つ方が多いですよね。体格に合わせるというより、自分が実際に持ち歩く荷物の量に合ったバッグを選ぶようになったんだと思います。スマートフォンがあれば多くのことができるし、財布も小さくなった。生活やガジェットの変化によって、必要な容量そのものが変わっているんです。女性や若い方だけでなく、従来のMONOLITHユーザーにとっても、今の生活に合ったサイズになっていると思います。

簡素化することも、デザインの一部なのでしょうか。
もちろんです。例えば、スマートフォンなどを素早く出し入れするためのオープンポケットなら、手が自然に届く位置と角度でなければ意味がないじゃないですか。手の大きな人でも出し入れできる幅を確保しようとすると、小さなバッグでは左右対称に配置できないこともある。そうやって、まず使いやすさから位置や大きさが一つずつ決まっていって、最後は全体をどう美しく見せるか、デザインの話になる。いつもその順番で、製品を仕上げていきます。
SOLOTEX® SYNEX®自体は決して安い生地ではありませんが、ポケットなどを必要な部分に絞り、仕様全体を見直すことで価格を抑えられました。もちろん、価格を下げるためだけに簡素化したわけではありません。軽さや扱いやすさを考えた結果として機能が整理され、それが手に取りやすい価格にもつながったんです。展開する5型は、税込1万9800円から2万8600円。同等サイズの従来モデルよりも1万円前後安くなりました。若い方にとって最初のMONOLITHになってくれたら嬉しいですし、すでに使ってくださっている方にも、用途に合わせて買い足すバッグとして選んでもらえたらと思っています。

従来のユーザーには、どのような使い方を提案したいですか。
SOLOTEX® SYNEX®はしわがついても元に戻りやすいので、旅行にはすごく向いていると思います。スーツケースやメインバッグの中に畳んで入れておき、旅先で広げて使う。小さく畳めるバッグはほかにもありますけど、ハーネスや構造まできちんと作られているものは、それほど多くありません。目的地で荷物が増えても快適に持ち歩けます。現在、この特性をさらに生かしたパッカブル仕様のアイテムも開発中です。今回、実際に製品を作ってみて、SOLOTEX® SYNEX®とバッグは、やはり相性がいいなと感じました。「STANDARD Neutral」は軽く柔らかな表情なので、これまでのMONOLITHよりも幅広い装いに馴染みやすい。まだまだいろいろな可能性がありそうです。

MONOLITHは端的に、ファッションブランドなのでしょうか。それとも道具を作るメーカーなのでしょうか。
僕たちは、あくまで道具を作るメーカーでありたいと思っています。特定のカルチャーやスタイルを強く打ち出すのではなく、誰にでも馴染むものを作りたい。ある意味では“ノンカルチャー”なのかもしれません。ただ、使われる場所によって、MONOLITHの見え方は全然違うんですよね。丸の内ではスーツを着て働く方が、ショルダーとブリーフケースの両方で使える2WAYモデルを選ぶ。一方、青山では「STANDARD」をファッションアイテムとして持つ方が多い。カメラマンのように道具が多い人は、耐久性や容量を求めて「PRO」を選びます。そうやって使う人が、それぞれの仕事や生活に合わせて価値を見つけてくれる。道具としての立場をぶらさずに作り続けた結果、ファッションとしても自然に成立するものになる。それがMONOLITHが目指す理想の姿です。SOLOTEX® SYNEX®によって実現した「STANDARD Neutral」で、その理想にまた一歩近づくことができました。
