今日本で最も世界から注目を集める人物の一人である小木 “Poggy” 基史さん。2006年にユナイテッドアローズの新業態「リカー、ウーマン&ティアーズ」をオープンし、2010年には新コンセプトレーベル「ユナイテッドアローズ&サンズ」を立ち上げ、ディレクターに就任。現在は同レーベルのディレクターを務めながら、自身の会社を設立し国内外問わず様々なプロジェクトに参画しています。ファッションシーンに新風を吹き込み続ける小木さんが見る、今後のファッションの可能性とは。
ファッションキュレーターとして国内外を飛び回る小木さんですが、ファッション業界の今をどう見ていらっしゃいますか?
メンズでいうと、多くのブランドがパリに集まる傾向にあります。特に、今までNYコレクションやラスベガスの展示会などでコレクションを披露していたアメリカのブランドが、パリのファッションウィークで発表したいというモチベーションに変わってきている。それは、ルイ・ヴィトンの現ディレクターであるヴァージル・アブローの影響も強いんだと思います。
確かに今、パリのコレクションブランドの多くはストリートに傾いている印象です。その傾向というのはいつ頃からあったのでしょうか。
2010年頃からでしょうか。ピガールというストリート発のブランドがパリでインディペンデントなショーをやり始めたのですが、そこにヴァージルも来ていました。その辺りから、ストリート系のブランドでもコレクションができる、あるいはやっていいという確信を得るようになってきたのかなと思います。
ちなみにモードファッションのストリート化。あるいはストリートファッションのモード化は今盛り上がりを見せていますが、東京では90年代頃からすでにそういう現象はあった気がします。
おっしゃる通りです。東京はそういう吸収の仕方やアレンジの仕方がすごく早かったですよね。そういう意味では、日本が築いてきたそういったカルチャーを海外の人たちがお手本にして吸収し、近年になって独自の発信を始めているという感じがします。
小木さんが「リカー、ウーマン&ティアーズ」で提案したスタイルや「ユナイテッドアローズ&サンズ」で行っていることも、とても実験的で先駆け的なものだという印象があります。
僕は、お店はメッセージだと思っているんです。「リカー、ウーマン&ティアーズ」で提案したトラッドとヒップホップのミックスも、「ユナイテッドアローズ&サンズ」で取り入れた“ストリート感覚のスーツ”やLA発信のラグジュアリーストリートという感覚も、世界のファッションを見て回って僕が受け取ったものを自分なりにミックスして、新しい形にして伝えたひとつの形。洋服そのもののクオリティももちろん大事ですが、僕はその後ろにある文化やストーリーを伝えたいという気持ちが強いんです。
常に新しいメッセージを探し続けている。
もちろん今もファッションシーンでは面白いことが起こり始めている。それを僕なりの形でまたメッセージとして届けられたらと常に思っています。さらに、今までは日本の外で起こっている面白いことやブランドだったりを国内に向けて発信するというのがセオリーでしたが、今はそれではいけない。日本国内への発信だけじゃなく、まだ世の中にない面白いことを世界に向けても発信していきたいと思っています。
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