SOLOTEXT

2022.02.03 Thu

アパレルオリジナル別注商品も多数手掛けるファクトリーブランドの先駆け。その母体であるウメダニットが「ソロテックス」を採用した、意外な理由。

古くからニットの製造が盛んな新潟県五泉において1961年に創業し、61年の歴史を誇るウメダニット。

近年ではWRAPINKNOTやBATOUなど、日本におけるファクトリーブランドの先駆けを立ち上げたことでも知られる同社が、ニットの接結糸や上質なセットアップのテキスタイルなどさまざまなアイテムに「ソロテックス」を採用してきたのは何故なのか。

前述のブランド立ち上げを経て、2020年2月から三代目の取締役社長に就任した梅田大樹氏に、話を聞いた。

 

現在ではファクトリーブランド「WRAPINKNOT」をはじめとしたニットの生産で知られるウメダニットですが、ニットよりも縫製で知られていた時代もあったのだとか。

 

ウメダニットはその名の通りニットをルーツとしているのですが、一時期は「縫製のウメダニット」と呼ばれていたほど縫製の仕事が多かったんです。以前はそれなりのロットで縫製を行っていたのですが、近年では海外生産に押されて縫製力が活かせる場面が徐々に少なくなってきたこともあり、当社ならではのオリジナリティを強化しようと考えて。そこで会社のルーツへと立ち返ってニット部門を強化するとともに、自社の持つ技術を活かしながら継承することも視野に入れて、自社ブランドを立ち上げることにしたんです。

 

そのブランドが、ファクトリーブランドの先駆けとも言えるWRAPINKNOT。

 

昨年、ブランド立ち上げから10周年を迎えることができました。WRAPINKNOTの成長とともに、リンキングと呼ばれる継ぎ目が目立ちにくい縫製が可能となったり、成形編みの製品も増えてきたりと、工場全体のニットの技術力も強化されてきているのを実感しています。それと同時に、洋服に対する情熱を持った人材も集まるようになってきたように思います。

 

「ソロテックス」は、どのようなきっかけで採用するようになったのでしょうか?

 

「ソロテックス」は、製造現場からの提案で使うようになったんです。以前はニット生地をつなぎ合わせる接結糸としてナイロンを使用していたのですが、改良を検討している段階で現場から「接結糸を『ソロテックス』に変えるといいのではないか」というアイデアが出てきました。そこで試験的に使ってみたら、ボリュームのあるニットでも型崩れしにくくなり、しかもテキスタイルの表情が非常に上品になるなど、いい事ずくめで。それ以降は接結糸には「ソロテックス」を使うというのが、弊社ではスタンダードになっています。

 

風通しがいい会社でなければ出てこないアイデアですね。

 

僕が働き始めた頃に「現場からあまり意見が出てこないな」と感じたことがあり、当時の社長に「全員面談をやってみませんか」と提案して。その頃から、少しずつ風通しの良い雰囲気になってきたように思いますね。技術的なことももちろん大事ですが、ウメダニットの強みは「人」だと思うんです。ものづくりが好きな人がいて、洋服に対する情熱がある人もいれば、そんな人たちをまとめるチーム戦を得意とする人もいる。その上で、3Dモデリングやリンキングなどの技術を活かすことが重要なのではないかと思っています。

 

何より梅田さんご自身が洋服が好き、というのも大きいかもしれませんね。

 

そうかもしれませんね。僕は創業家である梅田家の生まれではあるものの、洋服に興味がなかったらここで働くという選択肢もなかったと思いますし。ブランド立ち上げの際には、アタッシュドプレスやフリーのセールスなど、洋服好きが高じて仕事にしている知人などにも随分助けられたと思います。

 

それでは、WRAPINKNOTの紹介をお願いします。こちらは、2022年春夏にリリースとなるUNITED ARROWS別注ボーダーニット一見シンプルなリブニットですが、よく見るとさまざまな編み方が組み合わされていますね。

 

両サイドのリブを細くしたり、裾にリブの寄せ柄を入れたり、袖口に指ぬきを加えたりと、さり気なく技巧が凝らされています。全体に「ソロテックス」でプレーティング手法を施しつつ、袖や裾の伸びやすい部分にはさらに強いストレッチの補助糸を使うことでシルエットを保っています。

 

リブニットは、一度伸びてしまうとくたびれた感じになってしまうこともありますよね。

 

リサーチの一環でWRAPINKNOTをリピートで買われている方々にヒアリングしたところ、「型崩れしにくいのがいい」という意見を頂きまして。そのような点でも「ソロテックス」がすごくヘルプしてくれているな、と思います。

 

 

2021AWの「ソロテックス」を使ったWRAPINKNOTのニット2点も、参考までご紹介頂ければと。

 

茶色のカーディガンは、リブの谷の部分に濃い茶色の「ソロテックス」を入れることによって形態を安定させつつ、見た目にもグラデーションを付けたもの。場所によって「ソロテックス」の本数を変えることで、柔らかなリブでありながらしっかりとキックバックして型崩れしにくくなっています。一見かなり細身に見えますが、着てみると体に馴染んで非常にきれいなシルエットとすることができました。何度も試作を繰り返しながらフォルムを調整した甲斐がありましたね。

 


ブルーのニットはあえて平面的な形にしつつ、肩の部分などをアウトシームにしてアクセントにしています。プレーティング手法で「ソロテックス」を使い、キックバックが良くなると同時に、非常に上品な表情となっていると思います。

どちらもMADE IN JAPANの洋服を世界に発信している「TOKYO BASE」から、2021年AWシーズンに別注を受けたものです。

 

さらに、「大人のためのファンクショナルウェア」BATOUのセットアップもご紹介ください。

 

先ほど「縫製のウメダニット」というお話をさせていただきましたが、その縫製力を活かすものとして、セットアップを作りたいと考えたんです。

現在、カジュアルなセットアップでストレッチ素材のものは多く出ていますが、ビジネスでも映えるような上質な素材感で美しいシルエットというゾーンで考えると、動きやすく皺になりにくいものは意外と少ないなと思って。そこでエレガントでスポーティーなもの好む層をターゲットに、グレードの高い生地を使って大人が着てもサマになるセットアップを作ろうと思ったんです。

 

非常に評判は良く「もう一着作りたい」というリピートの声も多く頂いているのですが、オペレーション上かなり難しい作業があり、原価率も厳しいため、現状では店舗への卸は行わずに、型オーダーの受注生産という形で、自社オンラインと受注会での販売を行っています。

 

現在、「ソロテックス」の糸をニットに使用したり、生地をセットアップに使ったりと、さまざまな形で活用されていますが、「こんな機能性が欲しい」とか「こんなバリエーションがあれば」などのご意見はありますか?

 

先ほどお話したように、ニットを作る際に「ソロテックス」でシルエットを美しく保てるようにすることも多いのですが、もっと糸の太さやストレッチの強さなどのバリエーションが増えるといいですよね。ポリウレタンのように伸びて、よりキックバック性もある「ソロテックス」があれば、ニットの可能性をさらに追求することができるのではと思います。

また、BATOUのセットアップは購入された方からも非常に好評を頂いていますが、これは上質なルックスや肌触りと高い機能性を兼ね備えた「ソロテックス」のテキスタイルがあってのもの。高級なグレードで仕立て映えする「ソロテックス」の生地ラインナップがさらに充実すればいいと思いますね。