西野 大士

Daishi Nishino

Special Interview
2020.07.28 Tue

02. 素材が命

 

NEATで最初に作ったパンツはどんなデザインだったのですか?

 

最初(秋冬)はメルトンぐらいしっかりとした素材感の、しかも白のフラノのパンツがはきたくてそれを作りました。その次(春夏)はどうしてもオリーブのシアサッカーのパンツがはきたくて、後染めという技法を使って作ったのを覚えています。

色やデザインというよりも、素材ファーストの考え方なんですね。

 

NEATのようにある程度決まった形の中でコレクションを展開する場合、最も重要になるのは素材です。素材を変えるだけでサイズ感も変わりますし、質感が変わればシルエットも変わる。いかに自分のイメージにマッチしたいい素材に出会えるか。それはとても重視しています。

 

 

デザインをする上で一番大切にしているのはなんでしょうか?

 

やっぱり、自分がはきたいかどうかということ。それは絶対に外せないポイントです。もちろん色々誘惑はあります。もっとトレンドを取り入れたり、もっとわかりやすいシルエットに作り変えたり。「こうしたほうがいいよ」というアドバイスをいただいたりもします。だけど最終の判断は、本当にそれを自分がはきたいかどうかということ。そこは嘘をつきたくないんです。

 

 

そういった等身大の考え方、リアルさがファンにも伝わっているのだと思います。

 

本当にそれを僕が作る意味があるかどうかということも真剣に考えます。例えばNEATでは5ポケットのジーンズを作っていないのですが、それはリーバイス®を始めすでに素晴らしいプロダクトが世の中に存在するから。それより格好いいものを作る自信がないと言い換えてもいいかもしれません。

「ソロテックス」には本当に驚きました

 

「ソロテックス」という素材はご存知でしたか?

 

すみません。存在はもちろん知っていたのですが、具体的にどういったものかとういうのは、知らなかったんです。なので、今回のコラボレーションのご依頼を受けた時、まずはどういった素材があるのかを見させていただいたのですが…正直クオリティの高さに驚きました。

 

 

特にどういった点で?

 

色々ありますが、一番は非常に機能的でいながらいかにも化繊という感じがしないところですね。いただいたサンプルはどれを取っても、NEATとの相性はいいとすぐに確信しました。単純に僕の勉強不足だとは思うのですが、衝撃的ですらありましたね。素材って今こんなに進化しているんだと。

スラックスをはくときに、多くのお客様が気にされるのが“膝が抜ける”ことです。脚の曲げ伸ばしを繰り返すことで膝部分がヨレてしまうと見栄えが悪くなる。それを回避するためにあらかじめ膝の部分にカーブを入れるブランドもあるくらいです。その点、「ソロテックス」は伸びるだけじゃなくしっかり戻るので、曲げ伸ばしを繰り返しても膝が抜けにくい。しかもそれが天然素材見えするので、クラシックなデザインでもその魅力を損なわない。すごく時代に即した素材だと思います。

 

 

時代に即したというと、具体的なニーズがあったのでしょうか。

 

次のコレクションで洗えるウールというのを出すのですが、やはり今はそういった機能性を兼ね備えたものが求められている実感があります。それでいて、いかにも機能ウエアではない見栄えのもの。それにマッチすると思いますね。

実は韓国にオープンしたNEATの店舗サイドから、ちょうどそういった機能性の高いパンツは作れないのかという相談を受けていたんです。この生地を見せたら『すぐ作って欲しい』と。まさにタイムリーな出会いでした。

 

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西野 大士Daishi Nishino
ブルックスブラザーズジャパンでプレスを努めたのちに独立。2014年にパンツ専業ブランド〈NEAT〉を立ち上げる。自他共に認める洋服中毒者で、特にアメリカ古着に精通。深い造詣をベースに生み出されるデザインは幅広いファンから支持を集めている。アタッシュドプレス「にしのや」ディレクターも兼任。PRディレクターとしての信頼も厚い。