小木 基史

Motofumi Kogi

Special Interview
2019.10.21 Mon

02. 新しい可能性を積極的にフックアップしていかなければいけないと思う

 

今の日本のファッションシーンについてはどう見ていますか?

 

良くも悪くも日本には多くのルールがあります。ただそれが多すぎて、他の国の勢いに負けてしまっている部分は少なからずあると感じています。

規制が多い?

 

お客様のためにクオリティを守る。そのためにルールを作るのはもちろん大事ですが、中には企業を守るために作ったルールもある。それが混同されてしまうと、どうしても目線が変わってきてしまう。メッセージを発信するというより、守りに入ったようなショップになってしまうと思います。

また、日本はマーケットがしっかりしていて国内だけの売り上げだけである程度のビジネスになる可能性が高い。それはそれでいいことなのですが、逆に、そのせいでどうしても目線が国内だけに向いてしまうんです。それだとすごくもったいない。例えば、機能素材をファッションへと落とし込むセンスや技術が日本はすごく高いと思います。温暖化が世界的に進む中、そういったアイテムは世界的に需要が高くなってきていますが、それをきちんと海外にも理解してもらえるように発信しているかというと、そうではないと感じる時があります。

 

 

”目線”を改革していかなければいけませんね。

 

そういう意味で、今回ご紹介させていただいたプロダクト オールモストブラックというブランドは前時代的ではないというか、新しい目線を持っているという印象がある。面白いことになるんじゃないかと思って提案させていただきました。

先ほど機能素材の話がありましたが、帝人フロンティアの素材も多くのケースで活用されていると思います。

 

やはり日本の素材開発は進んでいる部分が多いですよね。「ソロテックス」などはまさにその代表的なもののひとつだと思います。今ではどのセレクトショップでもその素材を使用したアイテムが扱われている。とても素晴らしいことだと思います。それに帝人フロンティアはNY、ロンドン、パリにも事業拠点があって、グローバルな目線も持っている。そういうところも大事だと思います。

 

 

今回の(「ソロテックス」とデザイナー、あるいはブランドを繋げる)プロジェクトに関してはいかがでしょうか?

 

先ほどもお伝えした通り、多くのブランドは国内だけを見がちで、そのため他の様々な業界との繋がりが薄くなりがちです。そして国内は少子高齢化が進み、雑誌媒体などもどんどん大人向けに移行しつつある。日本はいわゆる先輩カルチャーが根強いですが、個人的にはそういったことを一度見直して、もっと若い才能をフックアップして欲しいと思っています。なので、こういうプロジェクトはすごくいいと思う。なかなか若手が一流の素材を使って、自由に表現をするという機会は得られないですから。とてもいいチャンスだと思います。

ひとつお願いがあるとすれば、こういった取り組みが一過性のものではなく、これからも継続して進めて欲しいですね。素材というのはそれだけでは決して成立しない。優れた料理人=デザイナーがいてこそその真価を発揮するものですから。今後遠からず、そのような企業姿勢がもっと求められるようになるのでは?と感じています。

 

次回は11/5(火)公開予定です。お楽しみに!

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小木 基史Motofumi Kogi
1997年ユナイテッドアローズに入社。2006年にセレクトショップ「Liquor,woman&tears」、2010年に新レーベル「ユナイテッドアローズ&サンズ」を立ち上げ、シーンに新風を巻き込む。2018年独立。今日本で最も影響力のあるファッショニスタの一人として、世界を股にかけ活躍中。