1836年に創業し、イタリアの多くの名門テキスタイルメーカーを傘下に収める企業、Marzotto。そんな歴史ある老舗がTEIJIN FRONTIERと手を組み、Marzotto社の生地の一部に「ソロテックス」を取り入れた、伝統と革新を兼ね備えたテキスタイル「Marzotto with SOLOTEX」が、この2021年のSSシーズンにリリースされた。
準備期間も含めると完成まで3年を費やしたというこの「Marzotto with SOLOTEX」を用いて、名だたるブランドがアイテムを制作。それらのアイテムは「Be ginza」として銀座や丸の内などのショップで展開、雑誌Beginの中でも特集を組まれるという。
今回ご登場いただくのは、英国クラシックとモードを融合させたブランド・DESIGNWORKSにてバイイングとMDを行うABAHOUSE INTERNATIONAL 宮崎雄司氏、ダウンジャケットをはじめとした機能性と美しさを兼ね備えたアイテム群で知られるTATRAS CONCEPT STOREのメンズバイヤー 石田 徹氏。そしてニュートラディショナルを提案するTEIMEN GINZAと今回の素材開発にも携わるTEIJIN FRONTIER 中野氏も迎えて、上質な素材を知るこれらのブランドが仕立て上げた「Marzotto with SOLOTEX」のアイテムについて語っていただいた。
■DESIGNWORKS宮崎雄司氏(以下DW宮崎)
今回はファーストシーズンよりお世話になっているブランド、COLONY CLOTHINGに別注する形で参加させていただいたんですが、そのクリエイティブディレクターの高田さんより「『Marzotto with SOLOTEX』という生地があるので、一緒にやってみませんか」とお声がけをいただいたんです。
「Marzotto」と「ソロテックス」は、全く違う性質の素材感ですが、どちらも非常にお客様の反応が良い生地。クラシカルな「Marzotto」に「ソロテックス」で機能を加えるとどうなるのだろうと、純粋に興味が湧きましたね。実際手にして見ると、さらっとした生地感で程よくストレッチが効いていて。
■TATRAS CONCEPT STORE 石田 徹氏(以下TCS石田)
TATRAS CONCEPT STOREは京都のブランド、RAINMAKERに別注したのですが、代表の渡部さんから「こんな企画がある」とお教えいただいて。
実のところ、TATRAS CONCEPT STOREのセレクトブランドでは「Marzotto」のようなクラシカルな生地はあまり扱っていないのですが、そこが新鮮で非常に面白そうな企画だな、と。「ソロテックス」は非常に伸びる素材というイメージだったので、「Marzotto」の伝統的なウール生地とどう組み合わさるのか興味が湧きましたね。実際見ると非常に美しい生地感に程よくストレッチが効いていて、いい意味で裏切られた感じでした。
■DW宮崎
以前銀座1丁目に店舗があった頃は、「秋冬のスーツはウール100%で仕立てなくてはいけない」というような古くからの銀座の価値観をお持ちのお客様が多かった印象です。現在の銀座6丁目に移ってからは「ファッション性だけでなく、快適さも欲しい」というお客様が増えた気がしています。場所が移ったということもあると思いますが、時代の空気を反映してよりカンファタブルなものを好む傾向が強くなった様に感じますね。
今回の「Marzotto with SOLOTEX」は、「Marzotto」という世界的に知名度の高いメーカーによる素材感と高い品質に、「ソロテックス」の快適性が加わった、時代にマッチした生地だと思います。
■TCS石田
TATRAS CONCEPT STOREの店舗では、さまざまなブランドを展開しているのですが、その中で機能性や快適性を追求した、H.I.P. by SOLIDOというブランドがあります。
そのブランドの方向性に、クラシカルなファッション軸を加えたアイテムとして、今回の「Marzotto with SOLOTEX」はデザインさせていただきました。
■DW宮崎
別注をかけたCOLONY CLOTHINGらしいマイクロストライプの生地をピックアップしたので、その素材感に合わせてセットアップがいいなと。トップスはオーバーサイズのジャケットブルゾン。ポケットが見た目以上に多くて便利だったりと、ジェットセッターをコンセプトにした同ブランドらしいディテールが効いているのと同時に、見た目以上に楽な着心地ではと思います。
中に合わせるものとしてご提案をしたいのは、今回オリジナル商品でリネンに「ソロテックス」をミックスしたモックネック。首元のラインがアクセントになった、大人の方でもシックに着用できる仕上がり。鹿の子のような厚手の素材感なので、春から秋にかけて長く着られるかと思います。
■TCS石田
こちらはRAINMAKERで定番人気の和服のディテールを取り入れた型を、今の時代に合わせてゆったりとしたシルエットにリサイズしたもの。ツヤ感のある黒の「Marzotto with SOLOTEX」が映えるノーカラーで、少しモードな雰囲気がありながら品のいい雰囲気になるのではと思います。パンツは旬のハイウエスト×ワイドシルエット。低めにつけられたアジャスターの位置もアクセントとして効いています。
インナーに合わせるカットソーはスーピマ綿に「ソロテックス」をミックスすることによってさらっとした手触り。形態安定性に優れているのでこちらも大きめのサイズ感で、ボトムにタックインして着用する想定でラウンドカットのデザインを施してありますが、アウトするのも面白いですよね。
■TEIJIN FRONTIER 中野 茂氏(以下TF中野)
最後に、TEIMEN GINZAのRICCARDO METHAも紹介させてください。1978年に繊維工場とイタリアのナポリでスタートし、2002年に自社ブランドを立ち上げた同ブランド。今回、濃いネイビーのグレンチェックと、ロンドンストライプの2タイプの「Marzotto with SOLOTEX」を使用しています。
パンツが評判のイタリアンブランドなので、ボトムはかなり太めの膝丈ショーツとワイドパンツの2パターンを柄違いで作りました。あえてベルトレスで、リラックスして着ていただけるかと思います。
トップスはカバーオールをモディファイしながら、ポケットなどのあしらいは大人っぽく仕上げています。Tシャツにも、バンドカラーのシャツなどにも合うのではと思います。
■DW宮崎
セットアップとインナーを組み合わせて、トータルでコーディネートするというのはやはりおもしろいなと思いましたね。あとは、「Marzotto with SOLOTEX」が単純にいい生地だな、と。それなりにかっちりしたシーンにも着ていける、ドレスとカジュアルの間として非常に使える生地だと思うので、柄や色味にバリエーションがあるともっといいかもしれません。
それに加えて、「ソロテックス」はストレッチ性や形態安定性が注目されがちですが、生地の艶っぽい表情も改めていいな、と感じましたね。
■TCS石田
「Marzotto with SOLOTEX」のような生地は、これまでお店であまり提案していないものでした。今回使ってみてその魅力を感じたのと同時に、こういったクラシコ系のテキスタイルでジャケット&パンツ以外にもどんなバリエーションが作れるんだろう、と思いましたね。
■TF中野
CPOジャケットや肌に近いインナーのアイテムなどは適していると思いますね。今回各ブランドさんにご協力いただいて、一定の評価をいただいたのと同時に、今後取り組むべき課題が見えてきた気がします。今後は、洗えるスペックの「Marzotto with SOLOTEX」や、この表情を保ちながらストレッチ性を高めたものを開発していければと考えていますので、ご期待ください。