SOLOTEXT

2021.04.21 Wed

Goldwin新井氏が語るヒットの法則「企画と材料がマッチングした時、ユーザーのニーズを満たす商品が生まれる」

1950年に富山で創業した津澤メリヤス製造所を前身とし、スキーウェアなどスポーツウェアで知られるブランド、Goldwin。

2016年秋、同ブランドはスキーウェアを軸としたライフスタイルブランドとして新たなスタートを切り、ヨーロッパ最大のスポーツ見本市であるISPOなどでも高い評価を得ている。

同社のリブランディングの手応えについて伺いつつ、Goldwinのライフスタイルやアウトドアコレクションにおいて使われている「ソロテックス」について、さらには長年の経験から知る「ヒットの法則」について伺った。

 

Goldwinのこれまでの歴史を、簡単にご説明お願いいたします。

■GW新井
現在はテックラボを構えている富山県小矢部市にて創業し、先の東京オリンピックにもウェア作りという形で参画したGoldwin。

創業者がスキー文化を日本に広めるため、インポートウェアの販売からスタートし、徐々にオリジナルのスキーウェアやアスレチックウェアなども展開してきました。バブルの頃のスキーブームを経て、人々の生活スタイルが変化してゆく中、スキーをブランドのオリジンに、アウトドアやアスレチック、ライフスタイルも包含した新たな価値を持つブランドとしてリブランディングを行ってきました。

欧州最大のスポーツ見本市「ISPO」の AWARDにおいては、2018年にダウンレイヤーカテゴリーでHOODED DOWN COATが金賞を、2019年には、アウターレイヤーカレゴリーでG-Fides Jacketが金賞を受賞するなど、高い評価を頂いています。

以前のロゴは会社のものと同じロゴを使われていましたが、2018年にブランドのものとして新たにロゴを設定しましたね。

■GW新井
現在も社として使用しているロゴは、大文字で力強く、男っぽいもの。ブランドとして新しく設定したロゴは、小文字を使うことでさまざまなライフスタイルにもマッチする、柔軟な雰囲気を表しています。フォントの斜めのラインは滑降する斜面を、ロゴの上に配置した3つのエレメントは、山並み・シュプール・躍動感を表現しています。このマークが雪の結晶に見えるという方もいらっしゃるのですが、そんな見え方もいいな、と思っています。

さまざまなライフスタイルに柔軟に対応できるブランドへと、舵を切った理由をお教えください。

■GW新井
以前はスキーなどに特化した専門性のあるウェアを追求していましたが、リブランディングに際して、現代のライフスタイルに合わせて、さまざまなシーンに柔軟に対応できるウェアを開発するという方向性を設定しました。かといって、汎用性を前提にして企画をした場合、魅力的なウェアとはならないと我々は考えています。Goldwinはスキーから生まれたブランドということもあり、スキーに必要な機能性を追求しながら、日常にも溶け込むウェアを作りたい。

スキーは山の遊びであり、自然とともに共存するスポーツ。さらに都市からゲレンデへの移動を伴うものです。そのための機能を盛り込んだ上で、使い方はユーザーに委ねる、という形で開発を進めるようにしています。そんな中、3層のゴアテックスを使ったコレクションなど、スキーのカテゴリでのリリースながらバックカントリーやアウトドアでも使えるウェアは好評をいただいています。

さらに、2016年からスタートしたライフスタイルカテゴリでは、スキーやアウトドアウエアの開発で培った知見を活かしながら、シンプルかつ合理的な機能を備えた、都市生活や日常に向けたウエアを展開しています。

そのライフスタイルのカテゴリに「ソロテックス」を使ったアイテムがあるとお聞きしました。

■GW新井
ナチュラルで軽い風合いを実現できる「ソロテックス」は、ユーザーの利便性を向上させていると思いますね。デイリーユースはもちろん、その延長線上にある旅やアスレチックの際にも使い勝手がいい。私も旅行の際には持っていくのですが、ちょっと汚れたな、と思ったら、気軽に手洗いできて、翌朝には乾いていますから。しかも劣化しやすいウレタンを使用していない。

まずは、ライフスタイルカテゴリのシャツジャケットから紹介しましょうか。この布帛は、横糸に「ソロテックス」を使用していて、独特の表面の雰囲気と発色の感じがいいんですよね。

裏地にはメッシュを施してあるので動きやすく、前立ては開閉しやすいドットボタン。袖口はニットになっているので腕まくりしやすく、裾にアジャスターがついていて温度調節もできる。と、シンプルなルックスの中に、機能性を詰め込んでいます。

同じ布帛生地で、開襟シャツもあるんですね。

■GW新井
こちらはリラックスして着られる半袖のシルエット。内側にメッシュのポケットがあり、チケットなどを入れられるようになっています。薄着になる夏のシーズンは、このちょっとしたディテールが役に立つんですよね。

さらにこちらは、ワッフル地のロングTシャツ。

■GW新井
こちらはアウトドアのコレクションのアイテムですね。「ソロテックス」を使用したこのワッフル地はナチュラルでストレッチ性に富んでおり、しかも軽い。先に紹介した布帛と同様に、形態安定性や速乾性にも優れています。天然素材のワッフル地は重くて乾きにくく、意外と破れやすいことも多いのですが、その欠点を見事に払拭しています。

そしてプレーンなTシャツにも「ソロテックス」が使われています。

■GW新井
この生地はフラットなのに肌に張り付かず、ナチュラルな着心地。安心感のある生地感で嵩高があって吸水性もあるのに軽いんです。脇の下などに切り替えを施すことによって、動きやすいパターンとなっています。艶を抑えたスモーキーな色もいいですよね。
どの製品も試作段階で開発チームのみんなで試着して、思い通りの機能性を実現できているかをテストして、試行錯誤を繰り返しながら製品化を行なっています。

今後のGoldwinの展望と、「ソロテックス」に望むことについてお教えください。

■GW新井
ブランドはずっと続いてゆくもので、ここで完結というポイントはない。常に将来を見据えながら革新を繰り返し、よりよい商品を生み出していかないといけないと思っています。同じことが、材料においても言えると思うんです。単体としてだけでなく、ブレンドしてさまざまな機能性を付加することのできる「ソロテックス」は、大きな可能性を秘めた素材。

今回の布帛の生地は「ソロテックス」を横糸に使うという形で形態安定性などを高めていますが、天然繊維をブレンドして吸水性を高めたり、絶妙な生地感を表現することもできる。

欲を言うと、現在のマットな色の出方も魅力的ですが、さらに色が鮮やかに出るものがあったらいいなとも思っています。さらにタイツなどフィット感が必要とされる生地に使用するには、ポリウレタンのような伸度があってキックバック性の高いものもあったらいいなと思いますね。

長年開発に携わってきた経験則から、企画と材料がマッチングした時、ユーザーのニーズに応える商品が生まれるのではないかと思っています。マッチングがうまくいったときには、「あ、これはヒットするな」とわかるんですよね。それくらい、素材というものは大事だと考えています。ですから、ゆくゆくはTEIJIN FRONTIER さんと協業してオリジナルの「ソロテックス」も作ってみたいですね。

一番大事なのはお客さんを想像して作ること。迷ったときには、常にそこに戻ってベストを尽くすことが大切です。自社の名を冠したブランドとして、Goldwinは引き続き真摯にもの作りを続けていきたいと考えています。