ブランドを本格始動させた2017年にLVMH PRIZEを受賞し、ストリートの熱気とともに、サブカルチャーからの影響も垣間見える世界観でファッショニスタから注目を集め続けるブランド、KOZABURO。
2020SSのルックを披露した昨年秋のRakuten Fashion Week TOKYOでは、さまざまな素材を駆使しながら東洋的なイメージも散りばめられたアイテム群とともに、枯山水を再現したランウェイや和太鼓を使ったパフォーマンスでも強いインパクトを残した。
それらのアイテム群には、刺し子やインディゴ染めのデニム、さらに蚊帳に使われるネットなどの伝統的な素材とともに、TEIJIN FRONTIERの「ソロテックス」も採用されていた。その真意について、2020SSのルックに込めた思いについて、デザイナーの赤坂公三郎に話を聞いた。
2020年春夏コレクションのテーマは、『Land of the Setting Sun』。1960年代から70年代にかけて活躍し、地球自体を表現媒体そのものとして捉えていた、Michael HeizerやRobert Smithson、Harvey Fiteなどのアメリカのランド・アーティスト達から着想を得て私が思い描いた、地球的なユートピアです。コレクションのアイテム群は、ランド・アーティストたちのドレスを起点としながら、クラシックの再解釈を繰り返すことにもフォーカスしています。
それと同時に、今回のコレクションには、2017年から行ってきた「個人的な理想のワードローブを作り上げる」というコンセプトの集大成というイメージもありました。その根底には、80〜90年代に私が体験してきた音楽や映画などのカルチャーや、そこから培われた理想の男性像があると思います。
ニューヨークに拠点を持ちながらの初めてのTOKYO FASHION WEEKでのショーということもあり,そのバックグラウンドが伝わるよう,今回のショーの見せ方のリファレンスとして、クエンティン・タランティーノ監督の『キルビル』や、園田賢次監督の『狂気の桜』の場面などがあります。
日本特有の文化や素材のなかから、私個人が徳と感じるものを選び抜いて制作したものには、国境を超えたユニバーサルな魅力があると信じています。今回のコレクションには、刺し子コットンやリサイクル・コットンを用いたキャンヴァス・デニム・ジャカードや、インディゴ染めのワッフル素材、蚊帳に用いられているカラミ織ネットなどの伝統的なものも用いられています。
その一方で、TEIJIN FRONTIERと新しく共同開発した「ソロテックス」のサステイナブル素材なども、シングル・ブレストのジャケットや“Dojo”トラックスーツ、ジョギング・ショーツなどといったKOZABURO らしさ溢れるワードローブの中に落とし込まれています。
シグネチャーでもある3D ブーツカットモデル、そしてストーンウォッシュを施したストレートカットの新モデル「Rodeo」です。軽量なサック・スーツや、銅の錆び加工を施したボタンを取り付けたワークジャケットと合わせています。
生まれ育った故郷、東京でのショーということもあり、この機会でしかできないものを作り上げたいという思いから、日本の友人やKOZABUROのフォロワーの方達などに出演して頂きました。
ブランドとしての軸は残しながら、着用する個人や環境とも呼応することで昇華することができたと同時に、東京の才能ある人々とも触れ合うことのできた、貴重な経験でした。
アメリカのヒップホップ文化には「ブレイキング」という理念があります。創造には破壊が必要と言われるように、隔てや固定概念を壊し創造することに、クリエーターの本質があると感じます。その文化の中には常にマイノリティーや不良性があり、そこに惹かれるところがあるのだと思います。
一人だけあげるとしたらNeil Young、でしょうか。 それ以上となると、長くなってしまいそうなのでまたの機会に。まずは彼の音楽を聴いて感じてください。
長く着られるもの、経年変化を楽しめるもの、新しさの中にも普遍性を感じさせるもの。
近年サスティナビリティーやオーガニック、エコロジーなどの観点が注目されていますが、それがさらに消費を促しているように思える場面も、残念ながらあります。この問題の大きな本質には、洋服や素材の浪費が挙げられると思います。この問題を解決するのに必要なのが、日本で古来から美徳とされている「良いものを長く着ること」であったり、「勿体ない」という感性なのではないかと思っています。
「ソロテックス」にはその滑らかさ、自然なストレッチ、クッション性、発色性の良さという感覚的な特性を含みながらも、再利用繊維との調和性もあり、形帯安定性に優れて丈夫で長く着ることができる。それらの点が、この問題の一つの答えなのではないかと感じて今回採用するに至りました。
着心地が良く100%再利用の素材でありながら、その制作工程において環境に無害であるような素材、でしょうか。さらに、それらが良い労働環境の中で作られているものであればいいですね。
現在、COVID-19という見えない新しい恐怖が世界を覆い、さまざまな変化を余儀なくされていますが、そんな状況でも微かな希望、楽しみ、前へ進むために考える機会を提供できるような物作りを末長く続けられたらと思っています。
Profile
赤坂公三郎。1984 年東京生まれ。日本で哲学を学んだのち、2011 年にセントラル・セント・マーチンズのファッション学部BAを、2016 年にパーソンズのMFA を卒業。その後自身のブランドであるKOZABUROを設立し、2017 年にはLVMH PRIZEにて特別賞を受賞。現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動中。