SOLOTEXT

2023.05.10 Wed

累計3,000点もの「ソロテックス」を使った生地を作ってきた丸和ニットが「バランサーキュラー」で作る、ウーブンニットのセットアップとは。

ニット産業が盛んな和歌山で1934年に創業し、工夫を凝らした編み生地を作り続けるとともに、さまざまなブランドのOEMも手掛けてきた丸和ニット。

同社は、世界に数台しかない編み機「バランサーキュラー」で作る、ニットと布帛の良さを融合させたウーブンニットを用いたファクトリーブランドBebrainでも知られている。ニットとは思えないほどの軽さと、継ぎ目を特殊ミシンで仕上げたフラットな着心地、パッカブルで家庭の洗濯機で洗えるという点などが高く評価され、2019年Bebrainのセットアップはグッドデザイン賞も受賞した。

そんな丸和ニットは「ソロテックス」が開発された当初からさまざまな編み地に採用しながら研究を続けてきた先駆者であり、近年はBebrainのアイテムにも「ソロテックス」を採用しているという。

独自技術の編み機「バランサーキュラー」とBebrainのアイテムについて、そして20年以上携わり続けてきた同社だからこそ知る「ソロテックス」の可能性について、話を聞いた。

 

丸和ニットでは、「ソロテックス」を開発当初から使われてきたそうですね。

辻太久郎 前専務:「ソロテックス」が開発されたばかりの1999年末、当時はまだ「ソロ」という名称だったんですが、旭化成が弊社を訪問して「40年ぶりの新しい合成繊維ができました」と紹介頂きまして。以前に別の素材で実績を上げていたこともあって「丸編みは丸和ニットさんに手掛けてもらいたい」とお声がけ頂いたんです。

最初に作ったサンプルは「ソロテックス」の生糸を使ったスムース生地でしたね。当時ほとんど取引のなかったヒステリックグラマーさんが気に入ってくれて、T シャツの生地にと採用してもらいました。

「ソロは天才だ」とよく言っていましたが、実際当時は「天才、ソロ」というキャッチフレーズで販売されていました。

これは行けるな、と「ソロテックス」だけで弊社初の展示会を開いたりもしましたね。それから20年以上、さまざまなものを開発してきました。

表地をリネンにして「ソロテックス」でプレーティングして形態安定性を高めた生地などは、見た目はリネンなのにストレッチ性があり、チクチクしにくいと非常に好評です。

辻武志 営業部長:ストレッチが安定している「ソロテックス」は、麻や和紙などと組み合わせると効果を発揮します。伸度のない糸にしなやかさを与えて、皺になりにくくするとともに、ストレッチ性を加えてくれるんです。

辻太久郎 前専務:さらにウールフライスの間に「ソロテックス」を挟み込んでストレッチ性を出したり、生地に透かし模様を付けるオパール加工を試したりと、数え切れないほどのトライアンドエラーを繰り返してきました。

 

どのくらいのサンプルを作られていたのでしょうか。

辻太久郎 前専務:一番多いときは、年間300点ぐらいの編み地サンプルを作っていました。そのうちの3割は量産化されて大小のヒットになっています。これは結構すごい打率ではないかと思いますね。

 

丸和ニットといえば、独自技術の編み機「バランサーキュラー」を使っていることでも有名ですね。

辻太久郎 前専務:「ソロテックス」と出会ったのと同じ2000年頃、北陸の方に見たこともない編み機があると聞きまして。ニットの整経編みもできる非常に面白い機械だったので、部品も資料もなく扱いが難しいのは承知で使い始めたんです。

辻雄策 社長:中古だったので非常に安く入手したのはいいのですが、改造費でかなりの金額が掛かってしまったという事も聞いています(笑)。

辻太久郎 前専務:「バランサーキュラー」の経糸にも「ソロテックス」を使ってみようと思っていたのですが、伸縮性が高いがゆえに経糸に絡んでしまい、当時は編むのが難しかったんです。それでナイロン長繊維を載せて使い、「ソロテックス」の経糸使用を一時断念します。とりあえずナイロンを経糸に固定することで、本格的に稼働し始めました。

 

そこから「バランサーキュラー」の生地を使ったオリジナルブランド、Bebrainが誕生するんですね。

辻武志 営業部長:Bebrainが立ち上がったのは2016年の秋。秋冬なのでウールを中心にしたコレクションだったのですが、軽い着用感と形態安定性が評判となって、立ち上がりから好評を頂いて。

2017年の春夏からはもっと動きやすく、皺になりにくくするため、バランサーキュラーの丸編み部分の一部に「ソロテックス」を使うようにしたんです。「ソロテックス」は高圧でなくとも染めることができるという点でも、「バランサーキュラー」との相性が良かったですね。

 

「バランサーキュラー」に「ソロテックス」を載せて編んだ商品の良さをお教えください。

 

辻武志 営業部長:他の「ソロテックス」を使った布帛の製品には負けないと自信を持って言えるのは、形態安定性の高さですね。家庭の洗濯機で洗ってもほとんど皺にならずに、干しただけですぐ着られる状態になる。繊維が元のところに戻ってくるので、ほとんど型崩れすることがないんです。これは「バランサーキュラー」と「ソロテックス」の組み合わせがあってこそだと思います。

そしてストレッチ性が高く非常に動きやすいという点。さらに通常のポリエステルよりも柔らかくソフトな風合いが続くとともに、色あいも綺麗に表現してくれます。

 

ご自身で洗ってほしいという気持ちも込めて、セットアップで購入された方には丸ごと洗えるランドリー収納ポーチもプレゼントしている。

 

辻雄策 社長:パッカブルで皺になりにくく、自宅でも洗濯できるというセットアップは、さまざまな会社が手掛けており、もはやレッドオーシャンだということは認識しています。

ただ、弊社には、「布帛とニットのいいとこ取り」を実現した「バランサーキュラー」という強い武器があります。さらに軽さや形態安定性、動きやすさと着心地の良さに関しては、「バランサーキュラー」と「ソロテックス」を使ったBebrainの商品が一番優れていると自負しています。

 

これまでさまざまな形で「ソロテックス」に関わり続けてきた丸和ニットさんが、「ソロテックス」に感じる可能性をお教えください。

辻太久郎 前専務:「ソロテックス」とはもう20年以上の付き合いですので、さまざまな製品を見たり扱ったりしてきました。「ソロテックス」は多様な可能性を秘めた素材。まだまだ知られざる使い方があるのではと思っています。

辻武志 営業部長:さきほど一度は頓挫したとお話しましたが、「バランサーキュラー」の経糸に「ソロテックス」を使った生地が、ある程度形になってきまして。通常ジャージはヨコにしか伸びないんですが、タテにもヨコにも伸びて非常に軽い、画期的な生地だと思っています。そのうち世に出ると思いますので、ぜひ期待していてください。