SOLOTEXT

2026.06.12 Fri

MINOTAUR INST.泉榮一氏とESTNATIONディレクター阿部駿風氏が語る、 M4Eの和紙ニットと「テックでありながら未来のクラシックとなりうる『ソロテックス』」。

ESTNATIONが次世代の経営者やクリエイターたちに向けたコレクションを展開すべく、MINOTAUR INST.デザイナー・泉榮一氏と組み、2023年にスタートしたライン、MINOTAUR INST. FOR ESTNATION(通称M4E)。

「ESTNATIONにないものを作りたい」という想いから始まったM4Eは、ラグジュアリーな雰囲気と現代社会に即した機能性という、一見相反する要素を融合させたコレクションとして、高い評価を得ている。

今回のSOLOTEXTでは、デザイナー・泉榮一氏に加えてESTNATIONディレクター・阿部駿風氏も迎え、新作の和紙ニットを軸に、M4Eのアイテムに込められた思想、そして「ソロテックス」に感じた可能性について語ってもらった。


まずはじめに、ESTNATIONのブランドコンセプトやターゲットについて教えてください。

阿部:ESTNATIONは、「大人がオンやオフで本当に着たい服を楽しみながらショッピングできる、大人のためのスペシャリティストア」として始まったブランドなんです。今年で26年になりますが、その根幹は変わっていません。社会性のある大人に向けたストアというイメージですね。単なる洋服を売るセレクトショップというだけでなく、価値観も同時に提案していければと考えています。

MINOTAUR INST. FOR ESTNATION(以下M4E)の、ブランドがスタートした経緯をお教えください。

阿部:僕がESTNATIONでポップアップを担当していた頃に、MINOTAUR INST.を展開したのがきっかけなんです。そこから少し間が空いて、4年ほど前に泉さんと再会して。「これまでのESTNATIONにはないテイストの、次世代のリーダーに向けた服を一緒に作りたいね」という話になったんです。

MINOTAUR INST.の世界観がESTNATIONにマッチする、という考えもあったのでしょうか?

阿部:「ESTNATIONにはないテイストだったからこそ、一緒にやってみたい」と思ったんです。泉さんの作る服は、デザインとともに高い機能性も魅力。でも、当時のESTNATIONのオリジナルブランドには、そういった「機能」を軸にした視点のものづくりが足りていなかった。だからこそ「20年以上テックウェアを作り続けてきた泉さんの力を借りたい」と思ったんです。

この10年ほどで、働き方や、ビジネスシーンで着る服はかなり変化してきました。そういった環境にも、M4Eのデザインや考え方は適しているように思えます。

阿部:そうですね。26年前、ESTNATIONは大人に向けたスペシャリティストア」として創業しました。その当時であれば、M4Eは「ビジネスに適したウェア」としては認識されなかったと思うんです。でもビジネスウェアの定義や働き方など、この10年ほどでかなり変わってきた。その変化の中で、僕らとしても「時代を少し先取りする提案」ができたらいいな、という思いもありました。

泉さんは、MINOTAUR INST.の世界観をどのようにM4Eに落とし込んでいるのでしょうか。

泉:MINOTAUR INST.と比べると、M4Eはより「機能を見える化」するように心がけています。

MINOTAUR INST.って、基本的には「着ないとわからない機能」が多いんですよ。例えば防水ジップやベンチレーションであっても、ぱっと見では気づかせないようなデザインにしている。同じ機能性であっても、M4Eでは、機能が「視覚的に伝わる」ようにしているんです。

それと同時に、ESTNATIONの持つラグジュアリー感を念頭に置いて「ラグジュアリーとカジュアルのバランス」も意識していると思います。

「ラグジュアリー感とカジュアル感の両立」って、かなり難しいですよね。

泉:でも、僕はずっとそういう仕事をしてきたんです。「アウトドアの機能を、仕事着として成立させる」というのもそのひとつですね。そんな「相反するものを両立させるディレクション」を、ずっとやってきた。

ESTNATIONって、六本木や銀座のような洗練された都市空間に存在しているイメージがあるんですよね。そんな場所にいる人たちの「リラックスしているけれど、ラグジュアリー感がある」雰囲気を作ることが大事なんです。

具体的には、素材やデザインのコントラスト。今回であれば、「和紙のシャリ感にスポーティな要素」を盛り込んだり、「高級感のある服にラバー仕様のジップ」を組み合わせるというのもそう。そんな細かい積み重ねですね。さらにロゴのサイズ感や、位置なども含めて、全体のバランスをとるようにしています。

泉さんは、これまでも錚々たるブランドで機能素材を採用した洋服を作り続けてきました。そもそも、機能素材のどこに魅力を感じているのでしょうか。

泉:僕、リアルタイムが好きなんですよ。例えば音楽であれば、過去のものも好きだけど、それより“今を感じさせる音楽”を知りたい。だからテック素材が好きというよりも、“今現在を感じさせる素材”が好きなんです。ただ、新しいものを追いかけるほど、逆に古いものへの敬意も強くなってくる。

アウトドア業界の方には、仕事では最新のテック素材を扱っていても、私服ではクラシックなものばかり着ている人もいますよね。私も同様に「天然素材に勝るものはない」という思いも持ちつつ、その上で、“今の技術で何ができるか”を考えているのだと思います。

僕はDJをすることもあるのですが、ファッションでも音楽でも、数年単位、数十年単位、数百年単位といった時間軸で時代を切り取りながら、そのバランスをディレクションして楽しんでいる感覚ですね。

「ソロテックス」については、以前からご存じだったんですか?

泉:もちろん知っていました。一番の良さは、「感触」ですね。「これが嫌なんだよな」っていう感触が、「ソロテックス」にはあまりない。あとは、5年、10年と使い続けていった際に、経年変化が保たれている。そこが良ければ、本当にすごいと思う。

僕のキャリアはスニーカーのバイヤーからスタートしているんですが、昔のレアスニーカーが加水分解してボロボロになるのがすごく悲しくて。だから、「経年変化しても成立するテック」しか選びたくないんです。

クラシック好きな人って「ほら、時間が経ってもいい感じでしょ」って言うじゃないですか。僕も、そういった意味で「未来のクラシック」になるテックを探してる。その文脈においても、「ソロテックス」にはすごく可能性を感じました。

今回紹介するアイテムについてお伺いします。今シーズン、M4Eで和紙ニットを作ろうとなった経緯は?

阿部:ESTNATIONでは、毎シーズン和紙ニットがすごく売れていたんです。常に在庫が不足しているほど人気で。ここ1〜2年の猛暑で「触った瞬間に涼しい」という感覚にみなさんすごく敏感になっているのか、「和紙のドライ感」が高く評価されているのを実感しています。そのこともあって「M4Eでも和紙ニットは絶対やりたい」という思いがありました。

ESTNATIONとして、「ソロテックス」と和紙素材を組み合わせたニットは、今回で3回目なんですよね。

阿部:そうです。回を重ねるごとにアップグレードしていて、今回はその集大成と言っても良いほど完成度が高いと思います。

泉:今回は、「大人が着られるラグジュアリーなカジュアルスーツ」という意味合いからセットアップで使うことも可能です。実際、セットで買われる方も多いですし、出張の際にも重宝するのではと思います。

Tシャツ・ジップポロ・ショーツの3型。ボトムがショーツのみというのが、かなり思い切った提案ですよね。どれも大胆にベンチレーションが施されています。

泉:今って、ラグジュアリーな人ほどリラックスしている。だから、テーラードスーツではない「現代のセットアップ」を作っている感覚かもしれません。

ベンチレーションは、「視覚的に伝わる機能」と「主張しすぎない機能」のバランスをとってこの形となっています。平面で見ると大胆なんですが、着ると意外と馴染む。そこは長年ベンチレーションをやってきた感覚が生きていると思います。

阿部:ファスナーをあえて細いタイプにして、主張を抑えているのもそうですね。ポケットの中でスマホが遊ばないようにモバイルポケットが施されているなどのディテールにより、機能性も高く仕上がっています。

泉:僕は、「柔らかいプロダクト」としての洋服を作りたいんです。例えば今回でいえば、マットブラックのパーツ使いやベンチレーション、モバイルポケットなど、プロダクト好きな人がグッとくるような。ESTNATIONって、家具やキャンドルが置いてあっても自然な空間。そういったプロダクトのような空気感を服にも持たせたいと思いながら、デザインしているんです。

今回は3色展開ですが、どの色もニュアンスのある素敵な色です。この3色にした理由などはあるのでしょうか?

泉:まず「黒」は外せないですよね。でも、せっかく糸を混ぜられるのであれば、ただの黒ではなく、テクスチャー感のある見え方にしたかったんです。

阿部:さらにここ最近、色物が動き始めてるんですよ。去年もベージュの動きがすごく良かった。

たまたま泉さんからいただいたイメージ画像がこんなパープルだったんです。

泉:単純にイメージで、そこまで深く考えていたわけではないのですが(笑)。でも、2000年代初頭に流行ったカーディガンの色味にも、こういう雰囲気がありましたよね。トラッドの流行が続いた最後のあたりで、ブルーデニムからブラックデニム、ホワイトデニムと変わってきて、こんなニュアンスのある色を合わせる感じ。ファッションってサイクルするので、今また若い子たちにも新鮮に映るんじゃないかなって思ったんです。

今後「ソロテックス」を使ってやってみたいことはありますか?

阿部:次のシーズンでは、帝人フロンティアさんの軽量で保温性のある素材「オクタ」と「ソロテックス」を組み合わせることも考えています。「ソロテックス」を軸にしながら、さらに素材のバリエーションを広げていきたいですね。

泉:僕自身、「ソロテックス」でどんなことができるのか、学んでいる途中なんです。でも、天然素材と組み合わせることで「テックでありながらクラシックやナチュラルな雰囲気も感じさせる」という、新しい価値観を作り出せる可能性を感じますね。

そんな「テックだけどクラシック」「ナチュラルだけど現代的」という、相反する要素を併せ持つ「ソロテックス」が、これから生まれてくることを期待しています。

ESTNATION 公式サイトはこちら