SOLOTEXT

2023.12.27 Wed

PRODISM渡邊編集長が語る「プロダクトとの相性も良く、変幻自在の素材『ソロテックス』」

「プロダクト至上主義」というコンセプトの元、モデルの顔出しをしないという方針を10年以上の間貫き通している稀有な雑誌「PRODISM」。渡邊敦男編集長の審美眼に適ったアイテムだけを掲載しているという同誌には、Hermèsやsacai、UNDERCOVERなどのハイブランドから、KITHやNIKEなどのストリートで人気のブランドまで、さまざまなアイテムが掲載されている。

そんな「PRODISM」において、何度も特集が組まれている「ソロテックス」。渡邊編集長は「ソロテックス」のどこに魅力を感じ、取り上げ続けているのかを探る。

 

PRODISMは「プロダクト至上主義」を掲げながら、モデルやクリエイターの「顔」には頼らないという方針を続けてきました。その理由はどこにあるのでしょうか?

PRODISMを創刊させた10年ほど前は、「あのモデルが着用していた」とか「あのミュージシャンに人気の」など、プロダクトの前に形容詞がついているのがトレンドで、洋服そのものの価値というより、誰が着用しているかという点で人気を得るという風潮があって。それはちょっと違うんじゃないか、と個人的に疑問を持っていたんです。

その一方で、真摯にものづくりをしているデザイナーやブランド関係者も日本にはたくさんいて。それであれば、もっとプロダクト自体に焦点を当てたいなと思ったんです。

かといってただ物撮りを並べた雑誌なら、単なるカタログの寄せ集めになってしまう。しっかりとカメラマンやスタイリストに入ってもらって、ファッションという軸を保ちながら、モデルやファッション関係者の顔に頼ることのない雑誌というコンセプトの元、PRODUCTとISMを組み合わせた「PRODISM」という造語を冠した雑誌を創刊しました。

 

2023年の10月号で創刊10年を迎えられて、時代の空気も変わってきたと思うんですが、10年続けられてきていかがですか?

韓国アイドルのようなアイコン的な人物が着用した洋服が流行する、という流れは今も続いてはいますが、その一方でプロダクトとしての魅力があるものは高くても売れるという傾向もある。PRODISMとしては間違った道は進んでいないかな、と思います。

 

扱うブランドは、Hermèsなどのラグジュアリーブランドから、sacaiやUNDERCOVERなど国内ハイファッション、さらにREDWINGやNIKEなどストリートの定番と言えるブランドまで、非常に幅広いです。取り上げるブランドやプロダクトの基準などはあるのでしょうか?

PRODISMは年に4回しか発売しない、ある意味アンダーグラウンドと言ってもいい存在ではありますが、姿勢はオーバーグラウンドでいたいと思っていて。

僕自身がファッションに関わり始めてからの20年で培ったコネクションを活かしながら、メゾンからストリートまで、分け隔てなくお付き合いしつつ、自分の目線で「いいな」と思ったプロダクトにフィーチャーするようにしています。ルールはできるだけ潔く、簡単なものがいいな、と。

そのルールの中で、メジャーとマイナーのバランスをとりつつ、自分の中の軸はブレないようにしながら、信じたブランドさんと向き合わせてもらっています。

 

「ソロテックス」についてはいつ頃認知されていたのでしょうか?

3、4年前ぐらいから、SOPH.やGraphpaperなど、PRODISMで扱っているブランドの展示会で見かけるようになって。ストレッチが効いているだけでなく、さまざまな機能性を付加させることができ、素材感も上品。面白い生地だなと思って非常に興味を持ちました。

 

「ソロテックス」を使ったアイテムでの特集も組まれていますが、その理由をお聞かせください。

非常に機能性が高く、PRODISMで取り扱っているブランドとも親和性の高い生地なので、是非取り上げたいなと。当初は工場を訪問して生産の技術や背景を取材する、ということも考えたのですが、それは他の雑誌もやっていたので、PRODISMならではの切り口で生地の魅力を伝えたいと思って。

ブランドを横断して「ソロテックス」を採用したアイテムを並列で紹介したり、Graphpaperのクリエイティブディレクター、南貴之氏に「ソロテックス」の魅力について聞いたりと、さまざまな角度から取り上げさせていただいています。

 

何度も特集を重ねた上での「ソロテックス」に対する印象は?

いろんなブランドが作った「ソロテックス」使いのアイテムを手にして思うのは、布帛のものからウール調のものまで非常にバリエーションが豊かということ。

さらに布帛のものだけ比べてみても、その表面感や雰囲気もかなり異なっていて、各ブランドが生地の扱い方を把握した上で、さまざまな形で「ソロテックス」を使うようになってきているな、と思います。

スウェットだったら、コットン100%という王道の素材の使い方があると思うんですが、そこに「ソロテックス」を加えたり置き換えたりすることで、機能性をプラスしたりいつもとは違った表情のものに仕上げている。ちょっと変化球が欲しいな、と思った時に、スパイス的に「ソロテックス」で面白いことやってみる? って流れがあるんじゃないか、と思ってて。

ここ数年で如実に「ソロテックス」を使うブランドは増えてきているのを感じます。      White Mountaineering®︎やSOPH.などは以前から機能性素材を使っていたので意外ではないのですが、KITHやTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.、Graphpaperなど、そのイメージの薄いブランドも「ソロテックス」を使うようになってきている。ある意味「定番」と言ってもいいぐらい、デザイナーが好んで使う生地となっているのではないかというのは、誌面を作りながら感じていますね。

 

ご自身で愛用している「ソロテックス」使いのアイテムはありますか?

倉石一樹くんがデザインしたDESCENTEのスノーボードウェアは、見た瞬間に「これはかっこいいな」と思って上下で揃えましたね。10年余りやっていなかったスノーボードを再開するきっかけになったぐらいです。

「ソロテックス フルフラン」にラミネート加工を施して3層構造にした特殊なウール調の生地で。ウールは使ってないんですが、触るとまるでウールのような手触りで、しかも防水性にも優れているというのが驚きでした。

あとは数年前、何気なくSOPH.で買ったシャツやハーフパンツが実は「ソロテックス」だったってこともありましたね。単純に快適だし、上品に合わせやすいな、と思って愛用していたんです。

 

単に機能性が高いだけでなく、ルックスも兼ね備えているのが「ソロテックス」の魅力ですね。

僕は、ファッションに関して全く懐古主義者ではないので、例えばすごい重いダッフルコートや動きにくいジャケットなどを、体に負荷かけてまで着たいとは思わないんですね。

昔の合繊繊維は、ちょっとトゥーマッチなところがあったというか、デザインやプロダクトとのマッチングがあまり良くなかったんじゃないか、と思うんです。

「ソロテックス」は、天然繊維とミックスしたりとさまざまな使い方ができるため、プロダクトとの相性も良く、非常に素晴らしいと思います。さらにパッカリングを出したコットンのようなものがあったりと、変幻自在でさまざまな表情を見せてくれる。これからどんどん面白い「ソロテックス」使いのアイテムが出てくるのが楽しみだな、と。

 

国内外の多くのアイテムを見てきた渡邊編集長の観点から、今後はこんな「ソロテックス」を使ったアイテムが欲しいというのはありますか?

個人的にデイリーウェアの進化に興味があって、快適な着心地とイージーケアを両立したアイテムがもっと欲しいですね。シャツやパンツなどはもちろん、アンダーウェアなども「ソロテックス」でもっと進化させることができると思うんです。

さらに、薄手の「ソロテックス」に撥水加工を施した、携帯できて雨も凌げるシェルジャケットや、ちょっとした寒さ対策に使えてコンパクトに収納できるカーディガンなどもいいですね。

「PRODISM」とも協業して一緒にプロダクトが作れたらいいな、と思います。特に、日本の夏は気温が非常に上がってきているので、その暑さに対応できるショーツや上物などが欲しいですね。 「ソロテックス」のメリットを十分に活かしながら、いろんなブランドでバリエーション豊かなアイテムを作って欲しいです。