1914年にオーストラリアにて創業され、名だたる水泳選手とも契約を結ぶ世界的スイムブランド、SPEEDO。
同社のトレーニング用スイムウェアには、2018年より「ソロテックス」が採用され、通常採用されているポリウレタン使用の素材と比べて、その耐久性を向上させることに一役買っている。さらにTOGAやBEAMSなどのブランドと協業し、「ソロテックス」を使用したアイテムで積極的にライフスタイル分野への進出も図っている同社。
スイムブランドとして確固たる地位を築いているSPEEDOがなぜ、ライフスタイル分野への進出を進めているのか。そしてなぜ、そこに「ソロテックス」が採用されたのか。同ブンドを擁するゴールドウィンのSPEEDO事業部長を務める、斎藤洋史氏に話を聞いた。
スイムウェアには体にフィットさせるためにポリウレタンの素材を使うことも多いのですが、ポリウレタンは塩素との相性が悪いのです。耐塩素のポリウレタンを使用していても、トレーニングなどで塩素の入った水にさらされ続ける状況では、80時間程度で劣化してしまうため、買い替える必要があります。そのため、2018年以前は他社のポリエステル素材を使用していたのですが、リニューアルして素材を見直そうというタイミングで「ソロテックス」を紹介いただいたんです。
「ソロテックス」は螺旋状のバネのような構造によりしっかりとストレッチとしっかりとキックバックがあり、ヘタれにくい。そのような理由から、素材を置き換えるとともにデザインにも微調整を加えて、2018年から採用を始めました。今ではトレーニングのカテゴリで定番の素材として展開しています。
ユーザーさんからも「縦横にしっかりと伸びてフィット感がある」と高評価を頂いています。
他ブランドとのコラボレーションが活発となったのは、2005年に本国であるオーストラリアのSPEEDOが主導でスタートした、COMME DES GARCONSとの協業がきっかけでした。Tシャツなどから始まって、2008年には大胆なデザインの「レーザーレーサー」が大きな話題に。このことにより、他ブランドと協業することでSPEEDOに馴染みのない層にもリーチすることができる、ということがわかりました。
我々には持ち得ない発想で、ソリッドな素材を上手に料理してくれるブランドとして、TOGAとコラボレーションさせていただきました。
2020年の夏に開発をスタートして、2021年3月にリリースとなったのですが、デザイナーの古田泰子さんがSPEEDOの素材をどう仕上げてくれるのか、ワクワクしたのを覚えていますね。
アスリート向け水着素材の「レーザーピュアパルス」はコートに、「ウルトラストレッチ」はスイムウェアに。そして「ソロテックス」はTシャツへと仕上がりました。ボディにシームレステープが施されたこのTシャツは、フラワーやモワレをモチーフとしたプリントもあり、同じ生地でドレスとショーツも展開しています。
「ソロテックス」はプリントした際の発色も非常によいので、色鮮やかな仕上がりになっています。SPEEDOのブランドロゴはそのままに、TOGAのブランドネームを組み合わせたマークも非常に興味深いですよね。
このコラボレーションは2019年から継続して毎年行っており、「ソロテックス」は今回も採用されています。3回目となる2021年は、「Nature Quest=自然の中での冒険/探求」というテーマのもと、SPEEDOのブランドイメージをいい意味で裏切る雰囲気のアートワークに仕上がりました。
SPEEDOとしての望みは、水にふれあう人が増えるとともに、ユーザーの行動範囲が広がること。しかしながらライトユーザーが水に入るためだけのためにスイムウェアを買うというのは、ちょっとハードルが高い。そのため、水陸両用のようなアイテムを展開したり、TOGAやBEAMSのようにファンの多いブランドを協業して、独自の解釈で料理してもらうことが重要だと考えています。
「ソロテックス」を使用したスイムウェアには、オーストラリアのMULGA THE ARTISTが描いたグラフィックを乗せたアイテムを展開する予定です。SPEEDOもオーストラリアで生まれたブランドで親和性が高いですし、ユニークなグラフィックは気分が上がるもの。2021年に初めて展開した際には、即完売のものもあったほど人気となっています。
SPEEDOが「ソロテックス」を使用している生地は微起毛をかけていることもあり、転写プリントとの相性がいいんです。鮮やかなグラフィックが綺麗に再現できて、伸びた時にも色抜けしないのも人気の理由だと思います。
ゴールドウインとして2030年や2050年に向けての目標数字を掲げながら、環境配慮型の素材の開発に取り組んでいます。
現状でSPEEDOがスイムウェアに採用している素材の65%は植物由来の「ソロテックス」ですが、35%はまだ石油由来のもの。それを環境に配慮した素材に置き換えて、2022年~23年には商品化することを目指しています。
機能的には現時点では満足しています。ルックスの面で希望があるとすれば、黒が若干浅くなってしまうのが気になるかな、とは思っています。糸や組織等の問題で難しいかもしれないですが…….可能であれば漆黒の黒を出したい、というのが希望ですね。