長時間椅子に座ってもストレスを感じさせないWallet Pantsや、圧倒的な収納力を誇るDevice Coatなど、一貫して「クリエイターのパフォーマンスを向上する機能服」を作り続けることで支持を集めるブランド、TEATORA。そのデザイナーである上出大輔氏が「現時点で考えうる最良の素材」を探してたどり着いた一つの答えが、TEIJIN FRONTIERの「ソロテックス」だった。そこに到るまでのストーリーと今後のTEATORAの展望を、murofficeディレクター・中室太輔が探る。
「クリエイターのパフォーマンスを向上する機能服」というコンセプトのもと、デスクワーク向けの機能的な服を開発しています。
これほどデスクワークが増えた時代というのは古今、例がありません。しかし、これまでデスクワークに向けた機能服というのは僕が知る限り存在しませんでした。もはや眠っている時間よりも長いこともある「座って働く」という点に着目してコンセプトを設計しました。
アパレル企業に対してはむしろ、こんなやり方ではだめだ、という感情から独立をスタートさせたので、反面教師でこそあれ、一切参考にしてはいません。アパレルのように開発時間や開発費用を分散して商品を作るのではなく、車や家電のように、全ての時間と費用を1点に集中させることで開発するという方法であるべきだと考えています。
支持されたことは結果論であって、開発当初、支持されるかどうかは全くわかりませんでした。ただ、圧倒的利便性を備えたものをユーザーが体験してしまえば、もうそれ以前には戻れないはず、という確信はありました。iPhoneのない世界がもう想像できないように。
まず、天然素材だから使わない、合成繊維だから採用するという考えはそもそもありません。洋服はそれなりの頻度で洗濯が欠かせないものであり、それゆえ古びていきやすく、ビジネスシーンはそのエイジングを良しとしづらい環境となっています。そのため、それらの環境の中で最も適した素材を開発する必要があります。
テアトラでは、単にビジネスシーンとざっくり定義するのではなく、長時間のフライトを想定することもあれば、目上の人に会うなど心的作用が働く環境なども想定した上で、TPOを細かく細分化し、それに適した素材開発をしています。ですのでその環境設定を元にしながら、どんな素材配合が適しているのかを選ぶ、という考え方です。
機能云々の前にTEIJINのものづくりの姿勢が第一でした。物づくりを真剣になさっている。たまたまそこにすばらしい糸があり、共同開発の中ですばらしいテキスタイルが生まれただけです。もし最初に物作りの姿勢を感じる機会がなかったら、「ソロテックス」という名前すら知ることもなかったかもしれません。
こういうケースは珍しいですが、この素材は数回の試作で完成しています。明確なコンセプトに合致する機能の糸が存在しており、さらに開発の方々の知識をお借りすることができた故だと思います。
シャツ生地に関してはまだまだ開発の余地が残っていると思います。現在展開しているキーボードシャツは「ソロテックス」ではなく、ソロテックスよりも細い糸を使用しています。特にシャツやメルトンのコートなどクラッシックな世界のカテゴリーにおいては、世界基準でエレガントという物差しが存在します。TEATORAでは「ソロテックス」を主にスーツに用いていますが、これは「ソロテックス」の糸の太さが、スーツで用いられるウールの糸の太さに近いからです。しかしシャツにおいては「ソロテックス」の糸はまだまだ太すぎる。是非細い糸の開発も進めていただきたいです。
あとは、あまりこういう場所で言うことではありませんが、TEIJINだから採用しているわけでも、「ソロテックス」だから採用しているわけでもありません。「ソロテックス」が僕の考える一つのカテゴリーの中で、現段階では最も優れているから採用しています。裏を返せば、もっと優れている糸が存在するのであれば「ソロテックス」でなくてもよいのです。素晴らしい開発部隊がいらっしゃるので、さらに優れた糸を開発していただき、「だけじゃないTEIJIN」を期待しています。