SOLOTEXT

2020.01.09 Thu

HAVERSACK乗秀幸次氏が挑む、パターンと縫製、そして素材の可能性

ミリタリーやワークウェア、テーラードをベースにしたヴィンテージなスタイルと、独特のカッティングで熱狂的なファンも多いHAVERSACK。同ブランドは、2019年の春夏コレクションから「ソロテックス」を使った挑戦的なアイテムを展開している。その手応えについて、デザイナーの乗秀幸次氏に聞いた。

 

HAVERSACKといえば、ヴィンテージなディテールにこだわったブランドというイメージが強かったため、正直「ソロテックス」を取り入れるというのは意外でした。どういった経緯でそのような決断に至ったのでしょうか?

確かにこれまで使ってきた素材といえば天然由来のものがほとんどで、それ以外の繊維はそれほど視野に入れていませんでした。でも、TEIJINの方から「ソロテックス」を紹介頂いて「今は合成繊維もかなり進化しているな」と。ユーザーがイージーケアなものや機能性の高いものを求めているというのも感じていましたから。2019のSSから使い始めて、この春夏で3シーズン目ですね。

 

担当者の方がブランドのことをよく理解してくれていたというのも大きかったのだとか。

そうですね。素材メーカーとは長いスパンで取引していますから、そんなに多くの会社と付き合いがあるわけではないんです。でも、「ソロテックス」は既に扱っているものとも全く違うカテゴリの素材だし、機能的にも差別化ができているので取り入れたいかな、と。

古くからのファンの反応はどうでしたか?

当初はどうかなと思っていたのですが、昨シーズン展開していたウールライクでウォッシャブルなローファージャケットなど「こういう軽いジャケットもいいよね、楽に着られて洗えるし」と、なかなか評判もよくて。そういった需要もあるんだ、と思いましたね。

 

ブランドイメージにあったアイテムに落とし込むために、試行錯誤したことなどはありましたか?

最初に作った圧着ポロコートは、丸みを持たせたカッティングだったため、かなり苦労しましたね。2020のSSに展開する圧着ステンカラーコートは、クラシカルなHAVERSACKのイメージを保ちながら直線的なラインでパターンメイキング。通常はベンチレーションにハトメを使うところをレーザーカットのみで軽く仕上げて、さらに極力接着部分を少なくすることで開口部を大きくして、より通気性を高めています。これは正直、技術的に難しいかなと思ったんですが、想像以上に綺麗に仕上がってきたので驚きました。軽くて雨風もしのげる上に、通気性にも優れた現代的なステンカラーコートといえますね。

TEIJINと二人三脚で作り上げたという感じなのですね。

素材はもちろん、圧着部分なども含めてTEIJIN FRONTIERの指定工場で行なっているのですが、「こんなことができるんだ」と非常に勉強になりました。圧着の作業はテクニックが必要なため、できる職人さんが限られているんです。どこにつなぎ目があるのかわからないくらいフラットに付き合わせていて、縫い代がないのに十分な強度がある。素材とパターンと縫製をマッチングさせるのが、非常に重要だなと改めて感じましたね。基本的にポリウレタンは耐久性に疑問があるため使わないのですが、「ソロテックス」は湿気の強い日本でも劣化しにくく、透湿性もある。さらに天然素材のようなルックスなのに撥水性があり、ナチュラルにストレッチしてくれるんです。(注)

(注)Haversack2020年SSの商品には織を工夫し透湿性があり、撥水加工を施した生地を使用

新しい技術を取り入れたことで、デザインにも影響してくることもありますか?

このコートのベンチレーションに関しては、レーザーカットや圧着の技術ありきといえますね。同じストレッチ素材を使ったものとして、ミリタリーカーゴパンツも展開しているんですが、ナチュラルストレッチで動きやすいのはもちろん、綿のように見えてシャリっとした風合いもあり、野暮ったく見えない。そこにあえて縫い目をパッカリングさせたり、裾を絞ることでラフな雰囲気も出しているんです。僕自身、これまでストレッチのアイテムはあまり履かなかったんですが、改めて自分で作ってみるとやっぱり楽だし、劣化が少ないのもいいなと思いますね。

今後はどのようなアイテムをリリースするのでしょうか。

2020年の秋冬に予定しているのが、360°ストレッチと防風性を兼ね備えた表地をあえて裏地に使い、スタンドカラーコートの上にショート丈パーカを組み合わせた3WAYのアウター。このパーカコートの表地は、上品な光沢とマットな素材感の対比が美しいんです。それにウールを思わせるような「ソロテックス」を使用したアイテムなどもリリース予定。時代が変わっても、メンズの形ってそこまで変わらないと思うんですが、これまでブランドとして作ってきたものに新しいテクニックをミックスさせることによって、今を感じられるアイテムになる。そのことが、僕自身も新鮮なんです。