SOLOTEXT

2026.07.01 Wed

ランウェアは天然×テックのハイブリッド素材の時代へ。B印MARKET個人商店主牧野英明氏が探る「ソロテックス」の新しい可能性。

個性豊かなBEAMSスタッフが「本当に良い」と考えるモノやコトを紹介するプラットフォーム、B印MARKET。その立ち上げメンバーの一人である牧野英明氏は、「エブリデイ全方位ランニングギア」をコンセプトに、ランニングを軸とした独自のセレクトや別注アイテムを提案している。

その背景にあるのは「ファッションとして成立しつつ、走りたい時にすぐ走れる服を着る」という自身のライフスタイル。今回のSOLOTEXTでは、牧野氏が愛用する「ソロテックス」使いのアイテムを取り上げつつ、ランニングとファッションを横断する独自の世界観、そしていま注目しているランニングスタイルなどについて話を聞く。


本日はよろしくお願いいたします! いきなりで恐縮ですが…名刺に「強制帰宅ラン」という記載があるんですね(笑)。

牧野:BEAMS CREATIVEの名刺には、出身地や趣味を書く欄があるんです。大体そこを突っ込まれるので、掴みとしては成功です(笑)。

以前から飲み会のあとに終電を逃して、10kmほど走って帰ることもよくあって。飲み会って最後の30分が一番面白いじゃないですか。その時間を楽しみたいがために走って帰ることも多くて。つまりそれが「強制帰宅ラン」。でも昔は革靴の日に限って乗り過ごすことも多く、「走れる靴ならよかったな」と思うこともたびたびで。そこから「走りたい時すぐに走れる服装」を意識するようになりました。

僕はもともとヴィンテージや革靴が大好きで、オールデンも2~30足ほど持っていました。だから、当時好きだったものの記憶は今も残っているんです。走るからと言って全身スポーツブランドになるわけじゃない。機能性素材の良さもわかるけど、ヘビーサーマルやモヘアニットも大好き。じゃあどうするか、と試行錯誤した結果が今のスタイル。ファッションとしても成立して、走っても快適なウェアを着るようになっていった感じです。

 

背景にヴィンテージファッションがありつつ、必要に応じて今のスタイルになっていたんですね。

そうなんです。そんなスタイルを続けていくうち、社内では徐々に「ランニングの人」と認識されるようになりました。

そんな頃に立ち上がったのが、ビームスのスタッフが太鼓判を押すアイテムを紹介するプラットフォーム、B印MARKET。その立ち上げメンバーに、僕がなぜか選ばれたんです。僕はバイヤー経験もなかったので、「本当に僕でいいんですか?」という気持ちで、すごく嬉しかったですね。

僕の個人商店のコンセプトは「エブリデイ全方位ランニングギア」。アイテムは、ランニングを軸に据えてセレクトしています。ランニングにまつわるものなら、自分なりの解釈やこじつけも含めて、自分が納得できればOKというルールにしています。

だから僕のB印MARKETにおける取引先は、「BEAMS」として知り合った方は少なくて、ランの現場や遊びで知り合った方たちばかり。B印MARKETは、BEAMSにとって実験場のような役割も果たしているのだと感じています。

 

ランニングは昔からやっていたのですか?

牧野:学生時代は陸上部でした。でも当時のランニングって本当にダサかったんですよ。スポーツブランドのみで、ソックスも白オンリー。ファッションとは無縁でした。

だから卒業した時は「こんなダサいもの二度とやるか」と思っていました(笑)。

そんな中で縁があってビームスに入り、社員になった。その後、「自分の趣味って何だろう」と考えた時に、もう一度ランニングを始めてみようと思ったんです。本格的に始めたのは20年くらい前ですね。初めて走ったフルマラソンは第2回東京マラソンでした。

そんな時にHOUYHNHNMの人たちと出会ったんです。彼らもランニングを遊びとして面白がり始めていて、そのコミュニティに参加しました。そこで初めて、ランニングって一人でやるものじゃなくて、人と共有するとすごく楽しいものなんだと気づいたんです。

 

ランニングの際のスタイルは、どのようなものが多いのですか?

牧野:僕の中に一つ考え方があって。スケーターって「よし、スケートするぞ」と言って着替えないじゃないですか。ダンサーもそう。だったらランナーは、なぜ走るために着替えるんだろうと思ったんです。

だから僕は普段着とランニングウェアを分けません。本気で走る装備は別として、少し走る程度ならファッション優先。コットンもウールも全然あり。カットオフしたチノやデニムも僕にとってはランニングウェアです。もともとウールだってスポーツウェアだったわけですし、洗えるものならレザーでもいいと思っています。

 

今日のスタイルも、ファッションとして成立しつつ、すぐに走れそうですよね。

牧野:僕はセットアップが好きなんです。自分で企画する時にも、「セットアップにできないかな」と考える。

今回はnarifuriのワッフルトップスとキャップに、meanswhileのワッフルショーツを合わせています。使われているワッフル生地はすべて「ソロテックス」。ブランドをまたいでセットアップが成立するのも面白いですよね。同じ素材だから自然につながるんです。

昔から好きだったワッフルの雰囲気に「ソロテックス」の機能性が加わって、長く着てもヨレにくいですし、本当に好きな素材ですね。しかもこのワッフルはスナッグが起きにくい特殊な設計。大きなワッフル組織でそれを実現しているのは結構すごいことだと思います。

 

narifuriのワッフルTシャツは、B印MARKETの別注だそうですね。

牧野:これはサイズ別注です。もともとのモデルが細身だったので、自分が着たいサイズ感に変更してもらいました。大きいサイズのTシャツとショーツ、それにキャップを各10枚程度。かなり小ロットでも対応してくれました。この「ソロテックス」のワッフル生地では、パーカーやロングスリーブ、配色違い、プリントモデルなど、いろいろな別注を作っています。

 

ショーツはmeanswhile。

牧野:こちらは別注ではなくセレクトです。「ソロテックス」のワッフル生地に、蒸れにくいポリエステルタフタを重ねていて、シルエットに変化を加えられるとともに、快適に走ることができます。これもTシャツがあって、セットアップで着ることも可能です。

 

 

さらにCITY COUNTRY CITY × Marmotのアイテムにも、「ソロテックス」が使用されたモデルがあり、B印MARKETでも取り扱いがあるとのこと。

牧野:このパンツはMarmotのアーカイブから「ソロテックス」使いのアイテムをピックアップして、CITY COUNTRY CITYのグラフィックを加えたものです。

膝のジップ使いでロングでもショートでも履くことのできる、まさに「走りたい時に走れる」パンツ。ジップを少し開けることでベンチレーションとしても使えるのもいいですよね。同素材のキャップもかわいいんです。

 

牧野さんがランニングウェアに求める要素は?

牧野:もちろんレースなら必要な機能はあります。でも最低限の機能が担保されていれば、あとはデザインやスタイルで選びたい。

フルマラソンでも軽さと動きやすさがあって、足元がしっかりしていれば大丈夫だと思っています。F1で言えば大事なのはエンジンとタイヤ。空力はその次です。トップ選手ならともかく、市民ランナーがそこを気にしても大きくは変わらない。だから僕には気分良く走れることの方が大事なんです。

フルマラソンでも、いわゆるガチのレーシングスタイルは着ません。少しゆったりしたノースリーブに、ショーツが僕の定番。あとはウール100%のグラデーション染めのアイテムを着たりもします。最近100マイルのトレイルに挑戦したのですが、その時も街で着られそうな服装の延長でした。

 

「ソロテックス」に対する印象はどうですか。

牧野:「ソロテックス」には信頼感がありますね。ただ、ツルツルした「いかにもスポーツウェア」な素材だったら、自分はあまり反応しなかったと思います。

「ソロテックス」は上品な艶があって、ワッフルみたいに表情のある生地を作ることもできる。「これもソロテックスなんだ」と知った時にすごく面白いと思って、そこからより意識するようになりました。

 

「ソロテックス」を使って、作ってみたいアイテムなどはありますか?

牧野:「ソロテックス」は天然素材と組み合わせることができるとのことで、ウールとの組み合わせが気になりますね。さらにガーメントダイされたアイテムなどもすごく欲しいです。草木染めみたいな表情が出たら面白そうですよね。

 

ランニングの際に使うウールのアイテムには、どんな機能性を求めていますか?

牧野:長距離ランの際、汗をかいて乾いてを繰り返す中で、ウールのアイテムは匂いや不快感が少ない。保温性もありますし、ウールは季節を問わず幅広く使えます。100マイルレースを走った時も、最終的に着ていたのはウールとポリエステルの混紡素材でした。

最近注目を集めているスイスのスポーツウェアブランド、[sn]super.natural(スーパーナチュラル)でも、メリノウール100%やウール×ポリエステルの混紡素材などが多く使われています。

さらにランニングの現場でも、感度の高い人たちを中心に天然素材へと回帰する流れを感じています。感度の高いランナーたちが、洗い込まれたヴィンテージTシャツや穴が開きそうなバンドTシャツを着て走っているのを目にしますね。トップスは古着で、ショーツやシューズは機能素材を使う、という人も多いです。

 

アスリートの間でも、天然素材の良さが再認識されているのですね。

そういう流れの中で、ぱっと見は天然素材にしか見えないけれど、実は「ソロテックス」の機能が入っているというアイテムがあったら面白いですね。例えばウールと「ソロテックス」を組み合わせたニットなら、使い込んでも美しいシルエットを保てるようになる。

テック系の人気も一旦落ち着いて、天然素材に回帰する流れを感じる今、そんな「天然素材×ソロテックス」のハイブリッド素材が求められているのではないかと思います。

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