“パンツ専業ブランド”は世の中にたくさんあるが、今国内で最も勢いのあるブランドといえば間違いなくNEATだ。モノが売れにくいと叫ばれる昨今のファッション業界において、学生から大人まで幅広い層でファンを獲得。人気ショップからのコラボレーションの引き合いも多い。なぜ今、NEATなのか。「とにかく自分の“好き”を追求したデザイン」「素材との相性は最も大事な要素」。純粋にモノづくりに取り組む西野さんの言葉に、新しい時代のブランドのあり方のヒントが見えます。
まずは西野さんがNEATを立ち上げるまでのいきさつをお伺いしたいのですが、そもそも西野さんのファッションのルーツはどこにあるのでしょうか?
完全にアメリカです。中学1年生のときにエアマックス95が流行ったりして、ナイキ、レッドウイング、リーバイスとアメリカのファッションに触れていくのですが、本当にハマったのは学生の頃。行きつけだった古着屋のオーナーの影響で、どっぷりLAのカルチャーに憧れました。それで、どうしても自分の目でその世界を見てみたくて、夏休みを使って3週間LAに一人旅へ。レンタカーを借りてスリフトストアやフリーマーケットを巡って、憧れのロースボウル(ロサンゼルスの北、パサデナにある球技場で開催される全米最大規模のフリーマーケット)にも行きました。モーテルに泊まりながら、結局サンディエゴくらいまでぶらぶらしたのかな。それを機にさらに夢中になりましたね。
そのアメリカ愛が高じてファッションの道へ?
それがそうではなく、こう見えて実は一度教師になっているんですよ僕(笑)。地元の淡路島で小学校の教師を2年ほどしていました。その間も相変わらず週末は古着屋に通っていたのですが、如何せん、せっかく買った古着を着る機会が圧倒的に少ない…。やっぱり大好きなファッションをもっと楽しみたいという気持ちが抑えられず、その欲求を満たすにはもうファッション業界に身を投じるしかない!と思って、一念発起飛び込みました。
すごい転身ですね。
教師をしながら夜間でファッションの専門学校に通った後、ブルックスブラザーズへ。販売員からプレスの道へと進みます。それを機に、それまで西海岸の文化に憧れていた僕が、東海岸のアメリカンファッションの魅力を知ることになります。スニーカーではなくオールデンの革靴、Tシャツやスウェットではなくスーツといったように。
西から東へ。
そうです。西も東も触れてみてわかったのですが、結局僕がアメリカのファッションにハマったのは、服装に対するその合理的な考え方だと思うんです。“おしゃれしない格好良さ”っていうんでしょうか。むしろ格好いいと思ってるのは僕だけで、アメリカの人たちは別におしゃれだと思ってスーツにニューバランスを合わせているわけじゃない。ただ楽だからなんですね。グランド・セントラル(NYのターミナル駅)でスーツにバックパック背負ってる人を僕は格好いいと思って見ていますが、当の本人はただその方が楽だからというだけ。でもそういうところに僕は格好よさを感じるし、大好きなんです。
その頃から、いつか自分のブランドをやりたいという構想を持つように?
いえ、その時点でそういった目標は全くありませんでしたね。強いて言えば、7年間務めたブルックスブラザーズを辞めた後でしょうか。会社を辞めたことでジャケットを着なくなり、革靴を履かなくなった。スラックスは好きだからはき続けたいのだけど、Tシャツとビーサンに合わせても様になるような、カジュアルだけどトラディショナルな魅力を残すスラックスがどこにも見当たらない…。だったら自分用に自分で作ってしまおうというのが、始まりです。
最初はあくまで自分用だった。
僕はある程度スポーツをやっていたせいもあり、脚ががっちりしていてスキニーパンツが似合わない。だから適度な太さがありながらも脚が綺麗に見えるというのは大前提で、なおかつアメトラな魅力が漂っていてい欲しい。Tシャツの裾を外に出して着てもパンツのウエストのプリーツが見えるようにタックは深め。バックポケットのボタンはむしろハンカチの出し入れに邪魔だから省略…。そんな感じで、とにかく超個人的な好みで作ったんです。納得いくまで何度も修正を繰り返して、ゆっくり1年くらいかけて完成させました。
それがなぜブランド化することに?
そのうち知人のうちの何人かに『自分にも作って欲しい』と言われるようになり、その流れで…。確かブランド化してみればと、誰かに提案されたんだったかな。ちょっと詳しいことを覚えていないんです(笑)。まさか自分がブランドを立ち上げるとはと思いながらやっていました。
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