西野 大士

Daishi Nishino

Special Interview
2020.07.31 Fri

03. “化繊=粗悪” はもう古い

 

今回はその生地を使って、どんなパンツを製作したのでしょうか?

 

ブランド初期からあるテーパードシルエットのパンツを、この生地を使って作りました。色はネイビー、ブラウン、オリーブの3色展開です。

この生地をNEATのパンツに落とし込む上で難しかったことは?

 

全くありませんでした。NEATのスラックスは普通のものに比べて、タックが深かったりハンドステッチにこだわったりと手間のかかる仕様です。そのためストレッチ性の高い化繊素材は縫製がしにくいという問題があったのですが、今回の生地ではそういう問題があるという報告は工場からも受けていません。それも、作り手としては嬉しいことですね。今回作ったパンツは、今の所韓国のショップ限定で展開する予定なのですが、良さそうなので次シーズンで日本でも展開しようか検討中です。

 

 

可能性が色々広がりそうですね。

 

そうですね。例えばスタプレっぽいトラウザーズとかを作っても良さそうですよね。また、意外と多い『センタークリースが落ちないパンツが欲しい』というお客様のご要望にも応えてくれそう。イメージは広がります。

今後、こういった素材は必要不可欠な素材になってくると思いますか?

 

思います。僕らはつい天然素材にこだわってしまいがちですが、目的やイメージするものに対してベストな選択をすることが大事だと改めて思いました。変な話ですが、天然素材を使いながらも、あえて化繊素材見えするよう加工して仕上げることもありますから。こういった素材開発が進めば、表現の幅ももっと広がると思います。“化繊は天然素材に比べて粗悪” というイメージは、もう完全に古い発想ですね。

余談ですが、先日、アメリカ軍に支給する生地というのを特別に譲ってもらったのですが、それが全てポリエステル混だったんです。聞いてみたら、アメリカではその方が“いい生地”とされているのだそう。『だって強度も高いしシワにならないし、いいだろ?』って。すごくアメリカらしい合理的な考え方だと思うんですが、僕はそれを知った時も、この考え方はこれからますます広がっていくんだろうなと思いましたね。

 

 

西野さんのインスピレーションである、アメリカの合理的な発想ですね。

 

その飾らない感じというか別に頑張っていない感じが、また格好いいじゃないですか。やっぱり魅力的ですよね。

この先、さらなる素材の進化に対して、西野さんからリクエストなどがあれば教えてください。

 

正直、ありません(笑)。むしろ今回こういう機会をいただいて、勉強させてもらったくらいですから。「ソロテックス」には他にも様々な種類があると聞いていますので、今後NEATでも色々とチャンレンジしながら、トラウザーズの新しい可能性を模索していきたいと思います。

西野 大士Daishi Nishino
ブルックスブラザーズジャパンでプレスを努めたのちに独立。2014年にパンツ専業ブランド〈NEAT〉を立ち上げる。自他共に認める洋服中毒者で、特にアメリカ古着に精通。深い造詣をベースに生み出されるデザインは幅広いファンから支持を集めている。アタッシュドプレス「にしのや」ディレクターも兼任。PRディレクターとしての信頼も厚い。