清永 浩文

Hirofumi Kiyonaga

Special Interview
2020.08.18 Tue

03. 優れた素材は、これからもっと必要になってくると思う

 

さて、今回の「ソロテックス」とのコラボレーションについてお伺いします。清永さんは洋服作りにおいて“素材”の重要性はどれくらいあると考えていますか?

 

非常に重要だと考えています。そもそも今僕らが行っているデザインというのは、誰かが作った元となるデザインをマイナーチェンジする作業に近いと僕は思っています。完全な0から1を生み出すデザイナーはいないと言ってもいい。素材はデザインをマイナーチェンジさせるための最も重要なものと言ってもいいかもしれません。

特に僕は素材から入るタイプです。デザイン画を描いてそれに合った素材を集めるのではなく、いい素材を見つけてそこからデザインを思い描いていく。どちらかというと料理人の考え方に近いのかもしれませんね。『今日はいい肉が手に入ったからアレを作ろう』みたいな。

 

 

ウールやコットンといった天然素材はもちろん、機能素材に関しても積極的に採用されているという印象です。

 

自分のスタイルを確立するためにまだ誰も通ったことがない道を探し続ける中で、アウトドアウエアに使われる機能素材をファッションに取り入れているブランドが少ないことに気づいたんです。2000年頃だったかな。洗ったらすぐに乾くとか、よく伸びるとか、シワにならないとか、そういった素材は大好きなんですよ。こう見えて僕はかなりの面倒くさがり屋なので。

「ソロテックス」にはどういった印象を持たれていましたか?

 

やはり一番は、形態安定性。それが非常に高いというイメージはありました。

 

 

実際使ってみていかがでしたか?

 

ウール混の「ソロテックス」は形が綺麗に出るから素材として扱いやすいし、天然素材見えするから洗練性が高いのもいい。素晴らしい素材だなと思いましたね。ストレッチ性の高い素材は当然スポーツウエアとの親和性も高いし、休日に着る服としても最適。〈バブアー〉との別注コートもこれまでにない出来になったと思います。いろいろな意味で、これからの時代に即したカプセルコレクションになったんじゃないかと思いますね。

全体を通して言えることは、用途の幅が広いということでしょうか。似たような素材はこれまでもありましたが、「ソロテックス」は種類が多くて、いろいろな表現に対応してくれるという印象。天然見えするものからテック素材っぽいものまで、ここまでバリエーションが豊富に揃う素材というのは、なかなかないんじゃないでしょうか。

あとはやはり形態安定性は魅力的です。着ていて綺麗が長持ちするというのもそうですが、収納時にも強い味方になる。畳んでしまっておいた去年の秋物の服を半年ぶりに引き出しから出してみたらしっかり畳みじわがついていてがっかり…ということがあると思うのですが、これはその心配が少ない。個人的にそれはとても嬉しいポイントですね。

 

 

ちなみに、ブランドとして天然素材と化繊素材の使い分けは意識されるところはあるのでしょうか?

 

今は特にこれと言ってその境目を意識することはないかな。必要だと感じだときに、最適な素材を、必要に応じて使用する。さっき言った通り、天然でも化繊でもいい素材が見つかればそれでいいものが作りたくなる。それに変わりはありません。特に最近は気候が難しくなってきていますから、機能性の高い素材というのはますます需要が高まるような気がしますね。

 

 

最後に、もし素材に対するリクエストなどがあれば、ぜひお聞かせください。

 

一度付けたセンタークリースが一生取れないパンツができたら最高ですね。センタークリースの入ったパンツが好きでよくはくのですが、数回はくと折り目が甘くなってみっともなくなってしまう。そのたびにクリーニングに出すのですが、最近それにちょっと疲れてきてしまって。シワにならず、折り目が取れないという2面性を持つパンツ…すいません、面倒くさがり屋の発想です(笑)。

清永 浩文Hirofumi Kiyonaga
洗練された日常着を目指し98年「SOPH.」を設立 (2002年にSOPHNET.へ改名)、翌99年には架空のフットボールチームを想定し「F.C.Real Bristol」を、2008年にはメンズウェア(ユニフォーム)の実験的プロジェクト「uniform experiment」をスタートするなどチャレンジングな戦略でシーンを牽引し続けている。7月末には渋谷の新たな複合商業施設「ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)」内に新店がオープン。