『VERY』や『BAILA』をはじめとする雑誌で多くの読者から支持を獲得。タレントからの信頼も厚く、ブランドのディレクションも手がけるなど、マルチな才能を発揮するスタイリストの辻直子さんにお話を伺いました。日本の女性のファッションのレベルの高さや辻さんが提案するコンサバティブの面白さ、そして素材の可能性について。ファッションはまだまだ楽しくなりそうです。
日本におけるレディスファッションは、世界的に見ても個性的な部分があると思うのですが、辻さんはそのあたりをどう見ていらっしゃいますか?
確かにそういった部分はあるかもしれません。トレンドはもちろんありますが、一極集中というよりも、いくつかのトレンドが同時に走っているという感じ。ある程度そのエッセンスは取り入れていますが、日本の女性たちはそれをうまく自分らしく取り入れるのが本当に上手だと思います。決して鵜呑みにしないというか。
トレンドをそのままトレースするのではなく、自分のスタイルに取り込むことができる?
世界的なファッショントレンドをそのまま取り入れても自分たちには似合わない、ということがわかっていると言い換えてもいいかもしれません。日本人の体系は欧米人のそれとは全然違いますし、取り巻く環境も違う。だからそのエッセンスをしっかり捉えて、あとは自分らしく加工して取り入れる。その能力に長けているのかなって思うんです。
ファッションに対するモチベーションが高いとも言えますね。
日本の女性は平均的に、とてもファッションに関心が高い。私は、それはいいことだと思います。もしかしたらそれは、ファストファッションブランドの台頭が影響を与えている部分もあるかもしれませんね。手頃な価格帯でトレンドをしっかり捉えた、デザイン性が高いアイテムが増えていますから。
確かに『この値段でこのクオリティ!?』というアイテムが本当に増えましたね。
それはとても良かったと思う反面、実は、個人的にはそれでいいのかなと思う部分もある。安くていいものは確かに増えましたが、高くて価値のあるものがその陰に潜んでしまうのはどうかなってって思うんです。
それは具体的にいうと、どういったことですか?
もちろん私も女性として、いわゆる“わかりやすい価値”に惹かれるところはあります。トレンド性とかデザインとか。でも、それとは別の“芯にある価値”も大事にしたい。例えば確かな縫製によるクオリティの違いとか、使用している素材の素晴らしさとか。やっぱりそういう細かいところの違いで、洋服の雰囲気って全然変わると思うんです。色の見え方が変わるし、質感も変わる。父がそういうところにこだわる人だったので、その影響かもしれませんね(笑)。でもそれを知ると、ファッションはもっと楽しくなると思うんです。
次回は1/30(木)公開予定です。お楽しみに!
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